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2019-20ブンデス日本人総括。
遠藤航、原口元気、宮市亮編。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph bypicture alliance/AFLO
posted2020/07/22 11:30
2部リーグ2位でシーズンを終え、1部リーグ復帰を決めたシュツットガルトの遠藤航。来シーズンにも期待が高まる。
「本当に終わると思ったから」
それでも原口は中心選手として全幅の信頼を置いてくれる新監督ケナン・コチャックの下で息を吹き返し、後半戦は質の高いプレーを見せた。ポジションもサイドの攻撃的MFに限らず、ボランチ、インサイドハーフ、トップ下でも起用されて、どこのポジションでもチームを牽引した。昇格にこそ手は届かなかったが、一時期は3部降格の危機にさえあったことを考えると、次へつながる大事なシーズンだったと言えるのではないだろうか。
ウィンターブレイク直前のシュツットガルト戦後に、原口はこう語っていた。
「うまく踏ん張れた。ここでズルズルいったら本当にキャリアが終わると思ったから」
コチャック監督就任がチームにとっても原口にとっても大きな転機になったことは間違いないが、原口はスロムカ前監督の下でも先発で起用されるまで立ち位置を回復させていたことも忘れてはいけない。
「ゲンキのプレーを見たか? 彼が見せられるプレーはすごいんだ。毎試合プレーして、ゴールを決めるくらいじゃないとおかしいくらいだ」。スロムカ前監督は以前、そう話していたこともある。
情熱と決意で必死に踏ん張った。
人間関係における“合う合わない”は、本人の努力では何ともならないことも多い。やってもムダなんじゃないか、なんのために頑張ってるんだ、と悲嘆にくれることだってあるだろう。でもそこでネガティブスパイラルに落ち込んでしまったら、次にチャンスが来た時に這い上がることができないかもしれない。
苦しい時こそ人間の真価が問われる。
自分の心の中で燃えているサッカーへの情熱、今を無駄にしたくないという決意、このまま終われるかという野心。原口は必死に踏ん張り、頭の中を整理して、サッカーと向き合って、自分を信じて、そしてこのシーズンを乗り越えたのだろう。
原口は、選手としても人間としても大きな成長を果たしたのではないだろうか。