フランス・フットボール通信BACK NUMBER
サッカー界で最強の影響力を持つ男!?
アル・ケライフィが語る石油王の思考法。
text by
パスカル・フェレPascal Ferre
photograph byFranck Seguin/L'Equipe
posted2020/07/26 08:00
リーグアンで絶対的な強さを誇るPSGのカリスマオーナー、アル・ケライフィ。石油王とひと言でくくれない大実業家である。
「鍵はビジョンと謙虚さを持ち続けることだ」
――あなたとともにトップ3に入ったのはクリスティアーノ・ロナウドとジャンニ・インファンティーノですが、彼らには何を望みますか?
「彼らと共に私が選ばれたことに大きな名誉を感じるし、同時にとても驚いた。
クリスティアーノ・ロナウドは、毎年のようにその気持ちの強さと類まれなキャラクターを証明している。日々進歩のための努力を怠らず、常に自分の限界に挑んでいる。意志の強さは心から称賛するし、すべてのアスリートが目指すべき最高のモデルだ。またピッチ外での寛大さは必ずしも理解されていないが、彼は膨大な時間とエネルギーを他の人々のために使っている。
インファンティーノ会長も同様で、世界で最も重要かつ影響力の大きな組織の指導者としての仕事をまっとうしている」
――それでは影響力を持った人間が陥りやすい罠は何でしょうか?
「どんな立場であろうと、また人生においてどれほどの役割やステイタスがあろうと、自分はこれだけの成功を収めたと驕りうぬ惚れてはならない。過去を忘れずに常に前に進もうとする。学ぶ姿勢と人の話を聞く姿勢を保ち続ける。鍵はビジョンと謙虚さを持ち続けることだ。そして謙虚なまま失敗から学び続ければ、ビジョンは必ず実現する」
「PSG基金は25万人を超える子供たちを支援した」
――権力に陶酔せず、高慢にならないためにはどうすればいいのでしょうか?
「私は自分をそんな風には見ていない。何をするにも過ちはつきもので、過ちを犯すのは決して恥ではない。過ちから教訓を引き出して、二度と繰り返さない。そう考えて行動することこそ大事だと思っている」
――あなたのどの顔が最も大きな影響力を持っているのでしょうか。PSG会長なのか、あるいはBeINスポーツ社長、QSI(カタール・スポーツ財団)の代表としての顔なのか?
「私にとってそれらは役割でも役職でも称号でもない。そうしたものからモチベーションを得たことは一度もない。求めているのは結果とインパクトだ。権威と影響力については、分析してコメントできるジャーナリストが大勢いるだろう」
――スポーツを超えた影響力はどうなのでしょうか?
「子供のころに私は、自分を助ける前に他人を助けろと学んだ。それは社会の規範のひとつであり、その規範に沿って私は育てられた。私がよく言うのはサッカーとは感動の共有であり、人生の別の局面では交わることのない人々を結びつける力を持っている点で、他と一線を画している。またサッカーは、辛い日常を送っている人々に喜びと希望をもたらす力を持っている。そして私はそうした人たち――とりわけ子供たちのために貢献する使命を感じている。この20年間で――9月には20周年を祝うが――われわれの基金(PSG基金)は25万人を超える子供たちを支援した。大半はフランスだが、フランス以外の国でもアフリカの飢餓への支援など多くの活動をおこなってきた。
要約すれば、それを実行しうるものは誰でも、より幸運に恵まれないもののことを考えねばならないということだ。それが私たちの基金の政策だ。だからこそ私たちは、2020年のリーグ優勝をコロナの病苦と戦っている人々、この危機的状況が始まって以来ずっとその改善のために勇敢に戦っている人々に捧げた」