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拍手はJリーグ観戦を豊かにする。
FC東京の好プレーに響いた効用とは。
posted2020/07/21 11:40
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
明けない夜はなく、出口のないトンネルもないけれど、あまりにも長かった。
2020年7月18日に行われたJ1第5節で、FC東京が浦和レッズを2-0と下した。
ホーム・味の素スタジアムで浦和に勝つのは'04年9月以来、実に16年ぶり――。
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その間、浦和戦での勝利はたったの3つ。アウェー・埼玉スタジアムで白星を掴んだことはない。旧国立競技場で行われた'04年11月のナビスコカップ決勝の勝利は0-0からPK戦によるもの。'11年12月の天皇杯準々決勝は熊谷での勝利。'13年9月、3-2での勝利も旧国立で挙げたものだった。
リーグ戦での通算成績は7勝9分20敗。昨年11月の浦和とのホームゲームでは痛恨のドローゲームを演じ、念願のリーグ優勝が遠のいた。
そんな因縁の相手にようやく勝てたのは、この試合を最後にロシアへと旅立つ橋本拳人を最高の形で送り出したい、という強いモチベーションのおかげだったか。
永井とアダイウトンの起用法が方程式。
ゲームが始まると、インサイドハーフの安部柊斗、東慶悟が素早く浦和のボールホルダーに身体を寄せ、アンカーの橋本自身も的確な読みと激しいチェックでバイタルエリアを守った。右ウイングのディエゴ・オリヴェイラまで自陣に戻り、サイドからの侵入を許さない。
長谷川健太監督にとって大きいのは、永井謙佑が肩の負傷から復帰したことだろう。この韋駄天が開始直後から快足を飛ばしてかき回し、後半に入って新加入のアダイウトンを投入し、さらにギアをアップさせる――。
この起用法が“勝利の方程式”になりつつある。実際、この日も61分に投入されたアダイウトンが5分後、40mにおよぶドリブル突破からダメ押しの2点目を決めた。
もっとも、このスーパーゴールや、ディエゴ・オリヴェイラの先制点に繋がる森重真人のロングフィードと室屋成の好クロスと同じくらい印象的だったものがある。
スタンドから湧き立つ拍手だ。