もちろん、旅立つ橋本拳人にも。

　この日の試合後、ロシアのFCロストフに移籍する橋本のお別れセレモニーが行われた。

　小学生時代から青赤のユニホームをまとってきた橋本は、生え抜き中の生え抜きと言える。その意味では、まさにスタンドのファン、サポーターは息子を送り出す心境だったことだろう。「拳人、頑張ってこいよ！」と最後に声を掛けたかったに違いない。橋本のチャントを、「ケント・トーキョー」コールを、大合唱したかったに違いない。

　でも、万雷の拍手だけに包まれたお別れセレモニーも悪くなかった。少なくとも橋本は、あの夜の拍手の雨を、決して忘れはしないだろう。