拍手に感情を込めて表現を――。

　一方、気になったのは、相手がミスしたあとに起こる拍手（これは制限のない普段から聞かれるが）。ミスによってマイボールになる＝自チームが優位になるわけだから、「やったぜ！」という気持ちで、つい拍手してしまうのだと思われる。だが、拍手とは本来、ポジティブな思いを表すものだろう。

　相手のミスはもちろん、自チームのすべてのプレーに対して拍手する必要もない。

　どんなプレーに、どれくらいの強さで、拍手を送るのか――。

　拍手をする・しないを含め、強弱とメリハリを付け、拍手に感情を込めて表現してほしい。それがきっと、自身のサッカーの見方、感じ方を豊かなものにするはずだ。

　ドリブルで持ち運んだ安部がレアンドロとのワンツーからシュートを放ったシーンで漏れた「おぉ！」という歓声や、ペナルティエリアへの進入を試みた紺野和也が倒された場面で聞かれた「あぁ！」という悲鳴はご愛嬌。感情の表出は理性では簡単には抑えられない。それこそまさにスポーツ観戦の醍醐味だということも、改めて感じられた。

まるで「トーキョー！」コール。

　ゲーム終盤、浦和の猛攻に対して、橋本が、中村が、安部が身体を張って防ぐたびに畳み掛けるように起きた拍手は、さながら「トーキョー！」コールのようだった。

　終了間際、勝利へのカウントダウンの段階になって、一部で自然発生的に起きた手拍子は、定番のチャント「眠らない街」を心の中で歌っていたのかもしれない。

　しかし、しばらくして拍手が手拍子を包み込み、手拍子をしていた人たちもその行為が禁止されていることを思い出したのか、うねる波のような拍手へと変わった。

　ゲーム終了を告げるホイッスルが鳴り響いたのは、その数十秒後のことだった。4705人のファン・サポーターは喜びを爆発させたい気持ちを抑え、ひときわ大きな拍手をピッチに送った。

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