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鬼木フロンターレが編み出す新手筋、
CBの攻撃関与と“藤井将棋”の金将。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/20 11:30
3年連続タイトルホルダーの川崎フロンターレ。谷口&車屋のCBコンビを含めた分厚い攻撃で“王座”奪回、複数タイトルを狙う。
柏戦、谷口と車屋のコンビが……。
その約2週間後。
7月11日に等々力競技場で行なわれた、J1の川崎フロンターレ対柏レイソル戦。試合を見ていると、なんとも不思議な感覚を味わった。
川崎のセンターバックに、である。
この日の先発は、谷口彰悟とジェジエウのコンビだった。
ところが、前半の早い時間帯にジェジエウが足を負傷。鬼木達監督は、左サイドバックで先発していた車屋紳太郎を左のCBに配置し、同郷の1歳先輩である谷口と中央に並べた。
この2人でCBを組むこと自体は、特別珍しいわけではない。
知られた話だが、熊本県にある両者の実家は近所同士である。
小学生時代は、毎日のように遊戯王のカードバトルで遊んでいた間柄だという。ともに大津高校、筑波大学、川崎フロンターレと、学生からプロに至るまで同じキャリアを歩んでいる。
まるで兄を追う弟のような関係性だということもあり、2016年に漫画『宇宙兄弟』とクラブがコラボした際のポスターでは南波六太と弟・日々人のモデルに両者が起用されたほどだ。宇宙兄弟ならぬ、“熊本兄弟”といったところだろうか。
そんな同じ感覚を持っている中央の2人が、この試合展開では絶妙に機能した。
ハイラインの中でゲームを組み立て。
両者ともに足元の技術に長けており、簡単にはボールを失わない。スピードに秀でている2人は最終ラインを高く保ち、ハーフコートマッチを展開。守りの中心を担うCBコンビが攻撃の中心となって、ゲームのリズムを作り出していったのだ。
そう。まるで守りの要の駒である金将が、攻めに輝いていった藤井聡太の将棋のごとく、である。
左から右のCBに移動した谷口は、ボランチのような位置でゲームを組み立てつつ、右利きであることを生かして効果的な縦パスを配球。ここで相手の注意を引きつけたことに伴って、前線の家長昭博や脇坂泰斗はフィニッシュワークに専念できている。