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鬼木フロンターレが編み出す新手筋、
CBの攻撃関与と“藤井将棋”の金将。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/20 11:30
3年連続タイトルホルダーの川崎フロンターレ。谷口&車屋のCBコンビを含めた分厚い攻撃で“王座”奪回、複数タイトルを狙う。
苦戦したがCBの2人が攻撃で仕事。
川崎の先制点は、その一美へのロングボールを車屋が競り勝ち、それを拾った谷口から始まったビルドアップの展開によるものだった。
一方で試合を通じてみると、オールコートマンツーマンに近い形でプレッシャーをかけてくる相手の圧力に手こずった。相手のポゼッションに耐える時間帯も長く、一時は同点に追いつかれるなど苦戦を強いられている。
しかし地力に勝る川崎は、直後に投入された小林悠と三笘薫の活躍で再びリード。すると、そこからは足の止まった相手に一気に畳みかけた。
そしてこの試合でもCBコンビが攻撃面で仕事をしている。
まずは車屋紳太郎。
CKからのボールを打点の高いヘディングで競り勝ち、相手のハンドを誘って3点目につながるPKを獲得した。車屋は178cmと上背がある方ではないが、ボールに飛び込むタイミングに優れている印象がある。柏戦でも彼がニアサイドに飛び込んだ際にクリアされた流れ球が、家長の先制弾に繋がっている。これまでセットプレーではカウンターを受けた時に対応する要員として後ろに残る役割だったが、鬼木監督は今季、車屋をCKの攻めに活用している。
鬼木監督「セオリーを度外視して」
もう1人、谷口彰悟はラストプレーとなったCKで、ダメ押しのヘディングを決めてゲームを締めた。昨年はリーグ戦無得点に終わったが、今季はすでに2得点と好調だ。鬼木監督は「過密日程では鍵となる」と中断期間中からセットプレーでの得点に力を入れてきているが、守りの要であるCBコンビがそれを表現したのが興味深い。
「今季に関してはレギュレーションが大きく変わっているので、自分の常識やセオリーを度外視してやらないと、戦っていけないと思っています」
リーグ再開後、指揮官がそんな言葉を口にしている。
この言葉から読み解けば、サッカーにおける定跡には囚われず、センターバックという守りの要を、さらに攻撃に活用していくための「新手」を編み出そうとしているのかもしれない。
これで再開後、リーグ4連勝。
豊富な持ち駒で王座奪還を狙う今季の川崎が、どんな新手を繰り出していくのか。4-3-3布陣という戦型に注目が集まっているが、選手の個性を生かすピッチ上の狙いを深く読み取ってみるのも面白いだろう。