スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
宿敵バルサファンが棺桶を用意!?
5度目降格エスパニョールの悲哀。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2020/07/21 11:30
同都市のバルサ相手に2部降格を突き付けられたエスパニョール。1年でのプリメラ復帰を果たせるだろうか。
主力を引き抜かれた現場は粘ったが。
最終節でヨーロッパリーグ出場権を獲得した昨季の終了後、エスパニョールは監督のルビと得点源のボルハ・イグレシアス、守備の要マリオ・エルモソらを引き抜かれた。
しかも代わりに補強した新戦力のほとんどは使いものにならず、今季は序盤戦から下位に低迷。Bチームから昇格する形で就任したダビド・ガジェゴは第8節終了後に解任され、チームを最下位に沈めた後任のパブロ・マチンも2カ月半で首を切られた。
冬のマーケットでは合計4000万ユーロも投じ、ラウール・デ・トマス、アドリアン・エンバルバ、レアンドロ・カブレラら即戦力を補強。スポルティング・ヒホン、アラベスなどで確かな手腕を見せてきたアベラルド・フェルナンデスを新監督に迎えて巻き返しを図ったが、その後もチームの低空飛行は続いた。
それでも6月の再開初戦ではアラベスを2-0で破り、続くアウェーのヘタフェ戦でも退場者を出しながら粘り強く勝ち点1を獲得。この時点でようやく19位に浮上し、残留圏まで勝ち点3差と迫った。
過去に何度も同様のピンチを切り抜け、終わってみれば10位前後の定位置に落ち着いてきたチームである。なんだかんだで残留はできるだろう。そう楽観できたのもそこまでだった。
その後彼らは1ポイントも加えることができぬまま、終戦を迎えることになったからだ。
スタジアム周辺を歩いてみると。
スタジアムの裏手に回ると、ちょうどエスパニョールのチームバスが到着したところだった。選手たちの会場入りを見守った後、ペン記者の入場まで30分以上も待たされると警備員に言われたので、スタジアムの周囲を歩いてみる。
グッズショップは定休日で、スタジアムに併設されたショッピングモールも鉄の門を閉ざしていた。ファンらしい人の姿は皆無で、すれ違ったのは大きな犬と散歩しているおじさんだけだ。
いつの間にか中国人経営になっていたスタジアム前のバルで時間を潰し、定刻にプレス入口へ。両手とバッグをアルコールで消毒し、コンタクトレスの検温器で体温を測り、受付でパスとビブスを受け取る。
その際ちらりと取材者リストを覗くと、見慣れぬローカルメディアの名が並んでいた。全国紙は1社だけ。顔見知りがいないはずである。