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沢木敬介、ラグビーは愛こそすべて。
新監督が語るキヤノンに足りないもの。
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byWataru Sato
posted2020/07/14 11:40
キヤノンイーグルスの監督に就任した沢木敬介氏。サントリーでも発揮した辣腕ぶりを、再び見たい。(2019年撮影)
属している全員がチームを愛さないと。
2019-2020シーズンのキヤノンは、日本代表SH田中史朗が加入したことでSO田村優とのコンビに大きな注目が集まった。しかし、蓋を開けてみればリーグ中断までの6戦で3勝3敗。2人は随所に存在感を発揮したが、チームにフィットしたとは言い切れず、沢木の言葉を借りれば「一貫性のない試合」が続いた。
開幕戦の神戸製鋼コベルコスティーラーズや第4節のパナソニック ワイルドナイツという上位陣との対決ではそれぞれ16-50、17-51と大敗を喫している。
「パナ(パナソニック)の試合なんかは相手が1人少ない時間帯が長かったし、勝つチャンスはたくさんあったと思う。キヤノンに行く行かないの話が出る前から(キヤノンの)試合を見ていましたが、今季のチームからはエネルギーみたいなものをあんまり感じなかった。ミスボールに対する反応だったり、ラインブレイクされた後の戻りだったり、戦術云々よりもそういうものが伝わってこない。小さいところだけれども、チームに対する思いってそういう部分に見えてくると思うんですよ」
現代ラグビーにおいて得点源となるペナルティ誘発は、ディフェンスの質が生む。以前の取材で「ラグビーのディフェンスにおいて重要なことは?」と問いた際、沢木は「態度」と答えた。いつでもボールを奪ってやるぞ。まだまだ動けるぞ。チームのために体を張る1/15の戦いは、コンタクトする前から始まっている。その態度は味方にも熱を伝播させるのだ。
「簡単にいうと、それはチームや組織に対する『愛情』だと思うんですよ。キヤノンという組織とそこに属している全員がチームを愛さないといけない。まずはそこからでしょう。だから僕が入って最初にやることはそういう環境をしっかり作ることですね」
自分たちの強みとなるカルチャーを。
現役引退後の2007年に古巣サントリーで指導者キャリアをスタートさせた沢木は、U20日本代表の監督を経て、2015年W杯ではコーチングコーディネーターとして「ブライトンの奇跡」をサポートした。2016-2017シーズンからは前年度9位に沈んだ“元王者”サントリーの指揮を託され、就任1年目からリーグと日本選手権2冠を達成。翌年も連覇に導いている。
「サントリーには、自分たちでこだわってきたカルチャーがあるんです。新しく作ったこともあるけど、一から作り直したというよりは、意識を変えただけ。(合流前だったため)キヤノンのことはまだ詳しくわからないけど、スタッフや選手と会話を重ねて、もう1回自分たちの強みとなるようなカルチャーを作る。もちろん、これまでキヤノンが築いたものはあると思うし、そういうものも大事にしながらキヤノンに合ったやり方で確固たるものを作っていきたい」