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沢木敬介、ラグビーは愛こそすべて。
新監督が語るキヤノンに足りないもの。
posted2020/07/14 11:40
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph by
Wataru Sato
ラグビーファンにとって、胸躍るニュースが連発している。
ニュージーランド代表のスタンドオフ、ボーデン・バレットがサントリーサンゴリアスへ、昨年のW杯で日本から2トライを奪った南アフリカ代表のウインガー、マカゾレ・マピンピがNTTドコモ レッドハリケーンズへの加入を発表した。さらに長年スコットランド代表の主将を務めた名スクラムハーフ、グレイグ・レイドローはNTTコミュニケーションズ シャイニングアークスの一員となる。
しかし「胸躍る」のは、それだけが理由ではない。ビッグネーム襲来に負けない、むしろそれを上回るほどの期待感を抱かせるニュースが届いた。
沢木敬介、キヤノンイーグルスの指揮官に就任――日本ラグビー界きっての知将は2季ぶりとなるトップリーグへの帰還に、何を思うのか。まだチームに合流する前の6月末、話を聞いた。
サンウルブズでかけがえのない経験。
沢木は今季、サンウルブズのコーチングコーディネーターを務めていた。盟友・大久保直弥(ヘッドコーチ)とともに初のスーパーラグビーに挑んだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグは中断。志半ばチームは解散した。
「サンウルブズでは国内ではできない経験ができた。コーチとしての幅は広がったかなと思います」
トップリーグの日程が重なったことで日本代表メンバーを招集できず、外国人選手を中心としたメンバー構成となったが、齋藤直人ら有望な大学生やプロとしての出場機会に飢える選手を積極的に起用。「サンウルブズにあったやり方」を模索しながら、アプローチや戦術をいろいろ試したという。さまざまな境遇にいる選手へのコーチング、さらには文化の異なる選手たちを短期間で束ねるマネジメントは、これまで得られなかった経験だった。
一方で、初戦こそ勝利という最高のスタートを切ったが、中断までの6戦で1勝5敗と厳しい戦いが続いた。
「(スタッツ以上に点差が開いたのは)ラインブレイク後の質の差もあります。そういう小さいミスが大きく結果に影響するのがラグビー。いかに傷口を小さくしながら試合を進めることができるか。それができるのが強いチームだし、勝つ集団。それぞれの選手の経験やラグビーのナレッジの部分の差もあった。だから、そういう面でまだまだ成長できるチームだったと思いますね」
小さな部分での差。それは新天地キヤノンにも言えることだと沢木は語る。