熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
中島翔哉がポルトで迎えた大ピンチ。
タイトル直結の活躍で不評を覆せ。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2020/07/09 19:00
今年3月、ポルトの公式戦に臨んだ中島翔哉。シーズン最終盤、挽回のチャンスは来るか。
家族を思う中島と、クラブのズレ。
3月7日、リーグ第24節のリオ・アヴェ戦で久々に先発するとチーム唯一の得点をアシスト。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、この直後にシーズンが中断されてしまう。
それでもポルトガルにおける感染拡大は限定的で、5月初め、各クラブは練習を再開した。だが5月中旬以降、中島はチームの練習場に姿を現わさなくなった。
その理由を、中島の代理人は次のように説明する。
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「新型コロナウイルスの感染を怖れて、中島の家で働いていた日本人のスタッフやお手伝いさんたちが皆、帰国してしまった。夫人は幼い娘の世話で忙しく、しかも体調を崩してしまった。このため、中島は家で夫人と娘の面倒を見ることを余儀なくされたんだ」
長女が誕生したとき、中島は「出産は女性にとって命がけの大変な作業」と夫人を労り、「自分にとって、家族が一番大事。それ以上に大切なものはない」と語っている。人一倍家族思いの中島にとっては、当然の選択だったのだろう。
しかし、クラブ関係者の受け止め方は違ったようだ。地元各紙は、「中島の行動を“職場放棄”とする見方があった」と報じた。
6月2日、リーグ戦再開を翌日に控えた会見で、コンセイソン監督は「今、中島はチームにいない。彼の問題は、クラブ上層部に解決を委ねた」と憮然としていた。
競争相手のディアスと数字を比べると。
リーグ再開の時点で、ポルトは宿敵ベンフィカに勝ち点1差で首位。再開後の初戦で敗れ、ベンフィカが引き分けたため勝ち点で並ばれた。しかしその後は勝利を重ね、ベンフィカが星を取りこぼしたこともあって勝ち点差を6まで広げた。
この間、中島は引き続きチーム練習に参加せずに欠場を重ねた。
7月5日の時点で、中島はチームの公式戦51試合中28試合に出場して1得点3アシスト。プレー時間の合計は1307分で、チームの16番目だ。
これに対し、ディアスは45試合に出場して13得点2アシスト。得点数はチームで2番目に多く、プレー時間は2697分で中島の倍以上。2人の立場の差は、歴然としている。