マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
花巻東vs.明桜で見た4人の投手。
名門校でさえブランクは大きいのか。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySports Graphic Number
posted2020/07/12 11:30
投手としての才能を感じさせる明桜・長尾光。ポテンシャルは間違いないが、スカウトはどう評価するか。
橘高康太はこの春から投手に。
先発した投手・橘高は力は確かだが、勿体ないなぁとも感じた。
おそらく130キロ後半ぐらいの強い真っすぐを持っているのに、花巻東打線に結構捉えられている。下位の打者にも、内角速球を両腕をたたまれてレフトポール際にあわや! というライナー性を飛ばされたり、高めを完璧に叩かれて右中間を突破される。
打者が差し込まれても仕方ないようなコースを楽々弾き返されているのは、タイミングに苦労していないせいだろう。
惜しいのは、橘高投手が1、2、3のリズムであっさり投げてしまうことだ。テークバックがあと2秒、ジワ~ッとボールを持てて、1、2ぃのー、3で投げられるようになれば。
打者は投手に、持たれれば持たれるほどタイミングが難しくなる。聞いてみれば、橘高投手、これまでは一塁手としての出場が多く、本格的に投げ始めたのがこの春からとのこと。後ろから前への体重移動より、上体をかぶせて体を二つ折りにして投げるタイプだ。投げるパワーは十分だが、まだ「投手」になりきる過程の途中にいるようだ。
長尾光の投げるための「才能」。
7回からリリーフのマウンドに上がったのが長尾光だった。
この右腕、ブルペンで投げている時から、気になってしょうがなかった。
左足がサッと上がって、ヒザが顔の高さほどにも届く。それでいて、上体が後ろに反りも、前にかがみもせずに、背中がスッときれいに立っている。 ここまでは、昨年の佐々木朗希(大船渡高→ロッテ)と同じメカニズムだ。
そこから、左の肩と腰がしっかり投げる方向を向いた状態でステップして、右腕がタテにきれいにしなる。見ていてスカッと胸がすくような、さわやかなオーバーハンド。投げるための
「才能」を贅沢に持ち合わせた投手だ。