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開幕戦でサヨナラ打の栗原陵矢。
「城島健司の姿と重なる」23歳。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2020/06/24 11:30

開幕戦でサヨナラ打の栗原陵矢。「城島健司の姿と重なる」23歳。<Number Web> photograph by Kyodo News

開幕戦の延長10回、サヨナラ打を放って笑顔を見せた。栗原陵矢はホークスのニューヒーロー候補に名乗りをあげた。

とにかく謙遜、いかにも捕手。

 栗原は冷静に配球を読んでいた。だから、続く4球目の149キロのストレートを見事打ち返したのだ。非常に奥深く、見応えのある対決だった。

 改めて言うが、それをプロ初開幕スタメンの23歳の栗原がやってのけたのだ。

「すごく緊張しました。だけど、試合前に工藤公康監督に『楽しめ。責任は俺がとってやるから』と言ってもらえて、その言葉で気持ちが少し楽になりました。

 試合中も今宮(健太)さんから『とにかく振れ。振っていれば徐々に合ってくるから』と言ってもらえたり、最後のサヨナラの前も柳田(悠岐)さんに『リラックス、リラックス』と声を掛けてもらい、いつものように打席に向かうことができました」

 周りのおかげで自分は活躍できたと謙遜する。その辺り、いかにも捕手だ。

ここぞという場面でやけに回ってくる。

 ただ、開幕戦は「2番一塁」での起用だった。ホークスには甲斐拓也という3年連続ゴールデングラブ賞を獲得した、高くてぶ厚い存在がいる。栗原もマスクへのこだわりを強く持っているが、それ以上に試合に出る気持ちを優先させて昨シーズンから積極的に一塁手や外野手の練習にも取り組み、実際に試合にも出場してきた。

「開幕戦で2番打者というのは予想もしていませんでした。朝、球場に来て平石(洋介・一軍打撃)コーチに言われたときにびっくりしました」

 工藤監督は開幕前の練習試合で、12戦12通りのスタメンを試してきた。栗原は11試合の出場、うち10試合がスタメンで36打数12安打、1本塁打、6打点と好成績を残した。開幕スタメン起用は誰も疑わなかったが、2番を務めたのは最終戦の広島戦の1試合のみだったから、驚いたのは栗原本人だけではなかった。

 とはいえ、2番に座っていたからこそ、10回裏のあの場面で打席が回ってきたのだ。工藤監督の勝負運の強さ、そして栗原自身が「持ってる男」だという証だ。

 栗原のイケメンぶりに、野球の女神も惚れているのかもしれない。

 とにかく、ここぞという場面で回ってくる。そして、見事期待に応えてくれる。

【次ページ】 難しい問いに、真剣に答える。

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