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開幕戦でサヨナラ打の栗原陵矢。
「城島健司の姿と重なる」23歳。
posted2020/06/24 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ファンはいつだって新しいヒーローの登場を待っている。
だからホークスのファンは3カ月遅れの待ちに待った開幕戦で、さっそく最高に幸せな気分を味わったに違いない。
6月19日、PayPayドームで行われたホークス対マリーンズは投手戦の締まった試合展開となった。1-1のロースコアで延長戦に突入。今季の特別ルールにより真の最終回となる10回裏、ホークスは2アウトながらランナーを三塁に置いて劇的勝利への舞台を整えた。
そして直後、ホークスは球界で20年ぶり3度目となる2年連続開幕サヨナラ勝利を飾った。昨年は11回での決着。2年ともに延長戦サヨナラで勝ったのはこれがプロ野球史上初だった。
殊勲のヒーローは、入団6年目にして初の開幕スタメンを勝ちとった23歳の栗原陵矢である。
セオリーを無視したフォークに。
マリーンズバッテリーの奇抜な配球を攻略した。初球で152キロの低め直球を空振りしたのはともかく、2球目の空振りはフォークボールだった。
これはセオリー無視のリードである。三塁走者が還ればサヨナラの場面で、並の捕手ならば要求しづらい球種だ。しかし、マリーンズは26歳にして実績十分の田村龍弘がマスクをかぶっていた。若さゆえの強気もあっただろう。3球目もフォークだった。
一方で栗原もキャッチャーだ。2球目を見た時点で、頭の中を切り替えた。3球目はなんとか当ててファウルにした。これが大きかった。
「真っ直ぐを待っている中でフォークが来たら対応しようと思ったら、3球目はファウルに出来ました。ならば次からは、あれより低い球には手を出してはいけない。少し高めに目付けをしようと思いました」