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唯一無二のウォウォウォ!!
松崎しげると音楽とライオンズ。
posted2020/06/24 11:50
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Takuya Sugiyama
ウォウォウォ ライオンズ! ライオンズ! ライオンズ!
プロ野球ファンならずとも、ぶっといハイトーンでまくしあげるあの歌声、獅子の咆哮そのものであるかのようなあの曲を聴いたことがある人は多いはずだ。
西武ライオンズの黄金時代には、球場のみならずセゾングループの店がある街なら、そこらのヒットソングよりずっと多く流れていた。
西武ライオンズの球団歌『地平を駈ける獅子を見た』(作詞:阿久悠 作曲:小林亜星)。福岡から埼玉に移転した1979年に作られたとびきりキャッチーなこの曲は、今も唯一無二のアンセムとして輝いている。
現在発売中のNumber1005号のライオンズ70周年特集では、この曲を歌う松崎しげるに楽曲に込めた思いやライオンズのマイベストナインを聞いた。ノリノリの松崎は、ときにウォウォウォ! とアカペラで曲の一節を歌いながら、歌唱法の一端まで明かしてくれた(間近で感じたその声圧には吹き飛ばされそうになった!)。
紙面の都合上、紹介しきれなかった部分も多かったが、インタビューを進めるうちに見えてきたのは、松崎の人生そのものとも思える野球とライオンズと音楽とのかかわりだ。話はまず松崎の少年時代から始まった。
松崎少年の聖地は後楽園だった。
カクテル光線に照らされた青い芝生。こんがり焼けたソーセージにかかる赤いケチャップ。目で、耳で、鼻で、五感すべてで刺激を受けたあの頃の記憶を、70歳となってもありありと思い出すことができた。今ほど肌の色が黒くなかった松崎少年にとって、聖地といえば後楽園球場だった。
「そりゃもう当時は大っ巨人ファンだよ! 昭和24年生まれだからね。東京でテレビ放映があるのは巨人戦しかないわけだ。川崎球場とかも行っていたけど、やっぱり後楽園っていうのは自分の聖地。あの土のグラウンド、あの芝生、すごくきれいだった。
今の野球ファンもそうだろうけど、球場で食べたものの印象も強かった。僕らの頃はまだ物がなかった時代で、ホットドッグを見たときにはびっくりしたし、初めて食べた時のあのうまさっていうのはいまだに忘れられない。ホットドッグ=後楽園球場っていうイメージだね」