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開幕戦でサヨナラ打の栗原陵矢。
「城島健司の姿と重なる」23歳。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/06/24 11:30
開幕戦の延長10回、サヨナラ打を放って笑顔を見せた。栗原陵矢はホークスのニューヒーロー候補に名乗りをあげた。
難しい問いに、真剣に答える。
昨年4月13日のイーグルス戦(楽天生命パーク)では0-0の延長10回に代打起用されて値千金の決勝タイムリーを放った。これがプロ初打点だった。
同7月8日のライオンズ戦(東京ドーム)はホークス人気イベント「鷹の祭典」でスタンドは超満員。延長12回、5時間21分の激闘を制すサヨナラ犠飛を放った。また、昨年のファーム日本選手権では「4番左翼」で出場して3安打を放ち、ファーム日本一に貢献して優秀選手に選ばれた。
今春も3月21日の練習試合・マリーンズ戦でサヨナラ打を放っている。
「何なんですかね。わかんない、何でなのか……。いつもと同じ気持ちで入るようにはしています。変えないように。だから追い込まれても、余裕を持ちながら行くことができたのかなと思います」
開幕戦サヨナラヒーローの直後、その勝負強さの秘訣とは何なのか、問うてみた。
答えは出ない。だけど、近くで球団広報が、時間がないとばかりにソワソワする素振りを見せる中でも一生懸命に質問と向き合ってくれた。本当にありがたい。
高校時代は岡本和真や高橋光成を従えて。
また、今は新型コロナウイルス予防の観点から、プロ野球も普段とは違う仕様で開催されている。試合後のお立ち台はその1つ。
アナウンサーは密を避けて隣に立たないため、ヒーローは自分でマイクを持って喋るスタイルがとられている。普段と違えば、当然慣れるまではやりにくいものだ。だが、栗原はとてもしっかりと話していた。
栗原は人間性でも、野球の女神を惚れさせるだけの資質がある。
高校時代は、18歳以下侍ジャパンでキャプテンを務めたこともある。福井・春江工高(2014年に坂井高校に統合されて閉校)の3年夏のことだ。
当時の代表メンバーには岡本和真(智辯学園→現巨人)や高橋光成(前橋育英高→現西武)、淺間大基(横浜高→現日本ハム)、小島和哉(浦和学院→早稲田大→現ロッテ)らが顔を揃え、タイで行われた18Uアジア選手権で準優勝を飾った。
栗原は2年春のセンバツ甲子園には出場していた。しかし、最後の3年夏は福井大会の初戦(2回戦)でまさかの敗退を喫していたのだ。にもかかわらず代表入りし、そして個性派メンバーを束ねるキャプテンを任されたのだ。