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八村塁、NBAドラフト指名から1年。
中断、BLM…濃密すぎる激動の時間。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/06/23 11:30
チームメイトとデモに参加する八村塁。選手としてだけでなく、人間としても多くの経験をした1年であった。
チームメイトとデモに参加。
アメリカを変貌させた要因はコロナだけではない。5月下旬、ミネアポリスで黒人男性が白人警官に殺されたことがきっかけになり、全米各地で人種差別に抗議する大規模なデモが勃発。一部は暴動、略奪にまで発展し、今ではこの件がコロナウイルス以上に大きな話題となっている。
八村はしばらく公に姿を見せることはなかったが、6月19日、ワシントンDCでウィザーズのチームメイトたちとともにデモに参加した姿が大きく報道された。ドラフト時には、えんじ色に紺の柄のスーツ、青いシャツ、青の蝶ネクタイに日の丸のピンという服装でアリーナを闊歩した日本のパイオニアが、その1年後には仲間たちと“Together We Stand(一緒に立ち上がろう)”と書かれた横断幕を掲げ、“Black lives matter(黒人の命は大切だ)”と記された黒いTシャツでデモ行進している。こういった変化こそ激動の2020年を象徴している。
変わらない、周囲からの期待。
1年前とはほとんどすべてが変わったように思えるが、今でも変わらないものもある。バスケットボールプレイヤーとしての八村に対する周囲からの期待の大きさだ。ドラフト時から大騒ぎだった母国からだけではなく、八村はアメリカでも将来を嘱望される存在であり続けている。
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絶望的なパンデミックの中でも、NBAはシーズン再開に向けた話し合いを続けてきた。アダム・シルバー・コミッショナーをはじめとするリーグ幹部の必死の努力もあって、7月31日から無観客リーグが開催されることが内定。世情を考えれば信じられないことにも思えるが、順調にいけば、ウィザーズの選手たちもまもなくコートに戻ってくる。
再建途上のウィザーズの今季中の上位進出は現実的ではないだけに、エースのブラッドリー・ビールがオーランドでどれだけプレーするかは未知数だ。最初の数試合にチームが敗れたら、スタープレーヤーはそのままお役御免となることも考えられる。そんな中で、今が伸び盛りの八村は多くのプレー時間を手にすることになるのだろう。
「ウィザーズが八村を高く買っているのは、まだ多くの伸びしろを残していると考えているからだ。4カ月半も休んだのだから、オフシーズンをまるまる手にしたのと同じ。彼がどれだけ向上しているか、楽しみにしてみようじゃないか」
The Athleticのウィザーズ番記者、フレッド・キャッツ氏は6月16日の記事内でそう記していた。その言葉通り、オーランドでの無観客リーグでも、ウィザーズ内ではやはり八村が最大級の注目選手。その点だけは、2019年のドラフト以降、一度も変わらないことであり続けてきた。