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思い出した石川祐希が涙を流した日。
セリエAミラノ移籍に秘める覚悟。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiyoshi Sakamoto/AFLO
posted2020/06/12 11:40
イタリア・セリエAのミラノ移籍を発表した石川祐希(中央)。不安や心配はあると語るが、世界トップレベルのリーグでその技を磨く。
石川を惹きつけるセリエA。
「イタリアの上位4チーム、モデナ、チビタノーバ、ペルージャ、トレントでスタメンを張って、優勝する。それがトップ」
これが、大学生の頃から思い描き、卒業後にプロ選手になってからより明確になった石川の夢だ。
バレーボールでは、イタリアやポーランドのリーグが最高峰と言われるが、石川にとってイタリア・セリエAは、特に惹きつけられてやまない舞台だ。
「外国人枠も多いので、世界中からいろんなトップ選手が集まってくる。その中でプレーすることで、僕自身、磨かれる。成長するにはもってこいの環境です」
特に上位の4チームには各国の代表選手が揃い、さながら世界選抜である。その中で日本人選手がレギュラーをつかみ、優勝に導く。誰も達成したことのない、少し前までは誰も想像すらできなかった壮大な野望だが、石川は着実にそこへの階段を上っている。
シエナ、パドヴァ、そしてミラノ。
石川が最初に見たセリエAのチームは、4強の1つ、モデナだった。中央大学1年生だった2014/15シーズン、短期移籍という形でモデナで約3カ月間過ごした。シーズン途中からの合流ということもあり、ほとんど試合に出場できずに帰国したが、「このチームでいつかはレギュラーとして活躍したい」という欲が生まれた。
中央大の松永理生監督(当時)に直訴し、2016/17シーズンから再びイタリアへ。今度は試合に出場することを優先し、下位のチームからステップアップしてきた。
'18/19シーズンに所属したシエナでは全試合に先発出場。昨シーズンのキオエネ・パドヴァでも中心選手としてチームを牽引し、「シエナの時よりも非常に高いパフォーマンスができていた。サーブがよかったし、スパイク、サーブレシーブに関しても前年以上の数字を出せている」と自身も成長を実感していた。
そのパドヴァは13チーム中7位だった。そして今季移籍したミラノは、4強に次ぐ5位のチーム。着々と目標に近づいている。
「あと2、3年したら上位4つのチームで戦いたいなと思いますし、早ければ来シーズン、声をかけていただけるように、今シーズン戦いたい。今季のパフォーマンスがよければ、一気に、そこに到達できるというふうに考えているので、本当に大事なシーズンになると思っています」
リモート取材の画面越しにそう語る石川は、いつも通り淡々としているのだが、その内にある、目標へと突き進む並々ならぬ熱情を感じた。