酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
松井秀喜がもし巨人ひと筋だったら。
日本人年間50発、MLBで減った三振。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/06/12 07:00
巨人からヤンキースへと旅立っていった松井秀喜。もしFAせずにNPBでプレーし続けたら……と想像を膨らませても面白い。
MLB年間20本以上は松井と大谷だけ。
しかし松井秀喜が2004年に記録した31本塁打は、今に至るも日本人打者の最多記録だ。
<日本人MLB打者のシーズン本塁打5傑>
1.松井秀喜(2004年)31本
2.松井秀喜(2009年)28本
3.松井秀喜(2007年)25本
4.松井秀喜(2005年)23本
5.大谷翔平(2018年)22本
※松井の所属はすべてヤンキース、大谷はエンゼルス
<同シーズン打点5傑>
1.松井秀喜(2005年)116打点
2.松井秀喜(2004年)108打点
3.松井秀喜(2003年)106打点
4.松井秀喜(2007年)103打点
5.松井秀喜(2009年)90打点
日本人選手でシーズン20本以上打った打者は松井秀喜(5回)と大谷翔平だけ。90打点以上は松井秀喜だけ。
大谷翔平に期待はかかるが、いまのところスラッガーと言える日本人打者は松井秀喜ひとりなのだ。
際立つのは三振数の少なさ。
記録を子細に眺めてみて、松井秀喜が素晴らしいと思うのは、三振数の少なさだ。21世紀以降は「三振は本塁打のコスト」という考え方が一般的になる中で、松井は10年間のMLBのキャリアで100三振以上は一度しかない。
特に2009年は28本塁打を打ちながら75三振。同僚のニック・スイッシャーは29本塁打で126三振だった。
パワーヒッター揃いのMLBに移っても、松井は本塁打を狙って振り回すことはしなかったのだ。NPBの10年間では934三振だったが、MLBの10年間では689三振と27%も減っている。レベルの高いリーグに移りながらも、松井の打撃は円熟味を増していたのだ。こういう数字を見ると「クレバーでいい打者だな」と思う。