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赤土王ナダルが失うクレーシーズン。
34歳、ツアー中断は有利か不利か。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/06/10 11:00
ローランギャロスでナダルが王者に輝く。それがこの時期の風物詩だった。2020年、彼のキャリアはどんな方向に進むのだろうか。
「今はみんなの健康と日常生活を」
「条件を満たすことができて、間違いなくこの日程でこの大会が開催されるという発表がない限りは、僕はテニスを最優先に考えることはできない。この状況であまり自分にストレスやプレッシャーをかけたくないんだ。今は、みんなの健康と、日常生活を少しずつ取り戻していくことが大事だと思っている」
どこに照準を合わせたらいいのかも不確かな状況で、マックスの意気込みで準備に取り組めるほど、彼らの練習やトレーニングは生易しいものではないのだろう。
数々のケガによってブランクを経験してきたナダルも、自分の意志と努力でスケジューリングを練り込めないもどかしさは新しい経験である。自分の力の及ばないことは構えて待つしかない。ナダルはどうやら、すっかり割り切っている。エキジビションとか、地域の小さなツアーとか、そんなことすら今は考えられないという。
ティームの父親が口にした皮肉。
ただ、すでに十分成し遂げたナダルだからこそこんなふうにゆったり構えてもいられるというもので、他の多くの選手、特に今年中の<打倒ビッグ3>を狙っていた若手たちには歯痒い時間であるに違いない。
そんな中、「ナダル、フェデラー、ジョコビッチにとってはこれがいい休息になり、ガタがきていた体をじっくり治して、選手寿命を延ばすことになる。ビッグ3の時代は続くだろう」と皮肉を込めて持論を展開したのはドミニク・ティームの父親だ。
過去2年連続で全仏の決勝でナダルに敗れ、今年の全豪ではノバク・ジョコビッチに決勝で惜敗したティームは、グランドスラムの新チャンピオンにもっとも近いと目されている26歳。
息子の悔しさを慮る父の気持ちがそんな表現になったようにも思えるが、ひょっとしたら本当にそういう見方もできるだろうか。