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赤土王ナダルが失うクレーシーズン。
34歳、ツアー中断は有利か不利か。
posted2020/06/10 11:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
「ナダル、骨折で電撃引退」というニュースにテニスファンがパニックになったのは10日ほど前のこと。
骨折? 試合もないのに練習で張り切りすぎたのか? コロナ禍で復活の気力も失って? まさかそんな――ナダルという名の競走馬。そんなオチを知るまでのわずかな時間だったが、いつか必ず来る日の衝撃を一瞬でも味わった人は多いかもしれない。
しかし、テニスのラファエル・ナダルはこの状況でもいたって元気で、ケガをしないように気を遣いながら、慎重にテニス再開の日を待っている。
34歳の誕生日を迎えた翌日の6月4日、ナダルはオンライン記者会見を行った。参加したメディア関係者は世界中から100人あまり。テレビや通信社、国際テニス記者協会と、媒体や組織の種類ごとに時間を区切り、計約2時間に及ぶ会見だった。
地元でラケットをほぼ触らない生活。
本来なら、その日は全仏オープンでベスト4が出揃っている頃である。大会史上最多12回の優勝を誇るナダルは、ほぼ毎年のようにローランギャロスで年を重ねてきた。
しかし、今年の誕生日はマジョルカの自宅で家族とささやかに祝っただけだよと笑い、「2カ月半のロックダウンの間、練習はまったくできなかった。このマンションにはテニスコートがないから。ラケットを触ることもしなかった。2週間くらい前からようやく練習を始めたけど、週に数日、1時間から1時間半程度かな」と近況を語る白いシャツ姿の外見に、目立った変化はない。
叔父で長年のコーチだったトニーの一家も暮らす自宅の敷地内にテニスコートがないというのは意外だったが、その一室からリモート会見に応じたナダルに自粛生活の暗い影は感じられなかった。背景は大きな窓と、その外に広がる澄み切った水色の空。こんな開放的なリモート映像もなかなか見ることがない。