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アーモンドアイ、初のGI8勝目へ。
「ルドルフの呪縛」がついに解ける?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2020/06/06 19:00
アーモンドアイがGI7勝目を手にしてから中2週間。その時は近づいている。
シンザンに並ぶ五冠、そして世界へ。
言ってもせんない「タラレバ」ではあるが、その年、日経賞と天皇賞・春を勝ったルドルフは、宝塚記念のあと欧州遠征に出る予定だった。宝塚記念はいわゆる「壮行レース」のように見られていたのだが、GI5勝目を挙げた天皇賞・春から欧州に直行していれば、違う未来がひらけていたかもしれない(そうしていれば、GI6勝目以降を挙げられなかった可能性もあったわけだが)。
陣営にとって、そのGI5勝目は、大きな節目となっていたはずだ。なぜならそれは、ルドルフが、戦後初のクラシック三冠馬となったシンザン以来、史上2頭目の五冠馬となった瞬間だったからだ。「シンザンを超えろ」が、長らく日本の競馬界のスローガンとなっていたのだ。
日本で頂点をきわめた「皇帝」に残された仕事は世界制覇のみ、と陣営が考えたのは当然のことだ。どうしても海外遠征を前提とした出走計画になり、リスクを背負いながら、ゆったりとしたローションを組むことになった。国内GI勝利数を増やすことが至上命題ではなかったわけだから、GI7勝でとどまった(と表現しては失礼な数だが)のも頷ける。
オペラオー、ウオッカの「タラレバ」。
そのほかのGI7勝馬にも、例えば、オペラオーなら、初めてライバルのメイショウドトウに敗れた’01年の宝塚記念、ウオッカなら、初のドバイ遠征からの帰国初戦で2着に敗れたヴィクトリアマイルのように、何かの歯車がひとつ違っていれば、もう1勝上乗せできたのではないかという「タラレバ」が必ずある。
が、どの馬も、まるで「ルドルフの呪縛」にがんじがらめにされたかのように、壁を超える前にターフを去っている。
今週の安田記念に出走するアーモンドアイも、昨年のこのレースのスタート直後、他馬に寄られる不利がなければ、もう壁を超えていたかもしれないという「タラレバ」を背負っている。
はたしてアーモンドアイは、「ルドルフの呪縛」から脱して、日本の競馬史に新たな金字塔を打ち立てることができるだろうか。