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ロベカルの超絶FKとブラジル代表。
夢の1997年とフランスW杯の失望。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/06/03 08:00
ロベルト・カルロスといえば「あのFK」である。それは1997年、フランスW杯前年の出来事だった。
伝説のFKが生まれたフランス戦。
リヨンのスタッド・ジェルランで行われたフランス戦では、自らの代名詞となるプレーを披露した選手がいた。ロベルト・カルロスである。
レアル・マドリーに所属する左サイドバックは、前半21分に直接FKで先制点を叩き出す。得意の左足から繰り出されたボールは、5枚のカベの右側をすり抜けると急激にスライス回転し、右ポストを叩いてネットに突き刺さったのだった。GKファビアン・バルテスは、あぜんとした表情を浮かべてボールを見送るしかなかった。
後半に失点したブラジルは、フランスと1-1で引分ける。ロベルト・カルロスのFKが最大の見どころとなった一戦だが、5日後のイタリア戦は違った。
魅惑のゴールショーにスタンディングオベーション。
6分、23分に失点して2点のビハインドを背負うと、ブラジルの選手たちの表情が変わった。35分、ロベルト・カルロスの左足シュートがオウンゴールを誘う。
1-2で迎えた後半、ブラジルは攻撃のギアをさらに上げる。チームに勢いをもたらしたのは、代表デビュー直後のデニウソンだった。サンパウロ所属の19歳が、得意のドリブルでイタリアの守備陣を翻弄する。
61分にPKを献上して再び2点差にされても、ブラジルは慌てない。
70分、ロナウドが追撃のゴールを決める。加入1シーズン目のバルセロナでリーグ得点王に輝いていた20歳は、タテパスを収めた瞬間にファビオ・カンナバーロのマークを外し、アレッサンドロ・コスタクルタにカバーを許さず、力みのないコントロールショットでGKジャンルカ・パリュウカの逆を突いた。
84分、今度はロマーリオだ。ロナウドのパスを受けてゴール前の密集を突破すると、GKパリュウカも抜き去ってゴールを奪う。
試合は3-3で終わり、ブラジルはまたも勝利を逃す。しかし、スペクタクルなゴールショーは観衆を大いに満足させた。試合終了とともに、スタンディング・オベーションが広がっていったのだった。