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日本人初のマイナーリーグ監督、
三好貴士が高校生に伝えたかったこと。
posted2020/05/23 20:00
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph by
Takashi Miyoshi
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、メジャーリーグもまだ先行きが見えない。今年から「ガルフ・コーストリーグ・ツインズ」の監督として指揮を執っている三好貴士も、キャンプ地のフロリダ州フォートマイヤーズの球団施設に残り、ステイホームの日々を送っている。
三好はツインズにとって、1901年の創立以来初となる日本人監督だ。MLBマイナーやNPBでのプレー経験がなく、MLB傘下で監督になった初の日本人でもある。
ルーキーリーグで監督としての第一歩を踏み出すはずだった今シーズン。その出鼻をくじかれた格好になったが、三好はすこぶる元気だ。13時間の時差を超えて、ZOOMから聞こえてくる声にも張りがある。
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「けっこう忙しくしてます。平日は毎日、カテゴリーに分かれてのテレミーティングがありますし。球団からは課題が出されます。シーズン中にはできない勉強もしているので、毎日あっという間に過ぎていきます」
あのロッド・カルーと同じグラウンドに立つ。
ふだんからポジティブを絵に描いたような三好だが、キャンプではそのマインドを高めるエポックな出来事があった。3月の11日間と限られた期間ではあったが、メジャーから招待され、スプリングトレーニングに参加したのだ。
「僕はもともとメジャーだから大きい仕事、という発想はないんです。マイナーでもぶれることなくプライドを持って仕事をしています。ですが、マーウィン・ゴンザレスといった一流選手や、世界でもトップレベルのコーチングスタッフと一緒の時間を過ごせたのは、大きな刺激になりました」
メジャーの懐の深さにも触れた。11日間を終え、三好はトップのミネソタ・ツインズ監督のロッコ・バルデッリにお礼のメールをした。すると、丁寧な返信が届いたという。
「多忙なメジャーの監督ですからね。返信はしなくていいよ、と書いたんです。それなのに誠実な彼は返信をくれたばかりか、メジャーのスタッフ全員に僕のメールを転送してくれまして……つい忘れがちになるこういう初心やリスペクトの気持ちがチームを強くする、ロッコのメールにはそう添えられてました」
それにしても、と三好は思う。
「よくここまでたどり着けたなと。(首位打者3度の)トニー・オリーバと(MLB通算3053安打の)ロッド・カルー(ともに巡回コーチ)と同じグラウンドに立てるなんて想像もできなかった。もちろん、まだ道半ばですけどね」