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“ガチ勢ゲーマー”で話題のマリー。
ツアー中断も模索する復活プラン。
posted2020/05/15 18:00
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
Getty Images
男子シングルス決勝の相手はベルギー出身のダビド・ゴファン。マッチポイントを握ったアンディ・マリーは最後にフォアのクロスを打ち抜く。勝利を決めた瞬間は両手を挙げて立ち上がり、小さな画面には腹部しか見えなくなった。
立ち上がり? 小さな画面?
そう。これは本物のテニスではなく、ゲームの話だ。
4月30日まで行われた「マドリード・オープン」は錦織圭を含めて男女ともトップ選手16人ずつが参戦し、自宅のテレビにゲーム機をつないでオンライン上で激突した。フェイスブックの大会公式アカウントから無料で視聴でき、出場者は画面下段の小窓にプレー中の様子が表示されるのだった。
世界ランキング56位のフェリシアノ・ロペスが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中断しているツアーの合間にもファンにテニスを届けたいという思いで運営に携わった。優勝賞金は15万ユーロ(約1700万円)で、ツアー中断の影響で経済的に苦しむ他の選手に寄付できる仕組みにもなっていた。
ゲームの自分に「どっち行ってるんだ!」
この大会は、ゲーマーを自認するマリーのためにあったといっても過言ではない。
1次リーグ初戦のブノワ・ペール戦から、気合の入り方が異彩を放っていた。
要所でポイントを決めると雄たけびを上げ、ラリー中にはプレーさながら、ショットごとに声を出してリズムを取った。ゲーム中は「手に汗かいてきた」と興奮し、相手のショットと逆方向にキャラクターが動くと「俺はどっちに行ってるんだ」と自分に怒る。
ペールが鮮やかなジャンピングバックハンドボレーを決めると、「なんてショットだ! 君がそんなプレーをしたのは見たことがない。普通は(実戦なら)君はあそこでドロップショットを放つのに」。