スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
乾所属エイバルが練習再開前に異議。
陽性者も確認、綱渡り続くリーガ。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMiguel Ruiz/FC Barcelona/AFP/AFLO
posted2020/05/13 11:00
週末の個人練習ではバルサのメッシもトレーニングに励んだ。感染リスクがついて回る中、ラ・リーガは再開できるのだろうか。
検査拒否、再開を反対する選手も。
ラ・リーガは感染予防を徹底したプロトコルを作成し、各クラブもそれを遵守しているが、それでも感染のリスクを完全に取り除くことはできない。選手が外でウイルスをもらってくる可能性は常にあるからだ。
そしてフットボールはフィジカルコンタクトが避けられない競技である。
2部で首位を快走するカディスのセンターバック、ファリは、そういった理由からリーグの再開に反対し、クラブが実施したウイルス検査も拒否しているラ・リーガ唯一の選手だ。
外出規制が始まって以降、感染のリスクを恐れて一度も家を出ていないという彼は、再開を拒否する代わりに1ユーロも給料をもらうつもりはないことを明言している。カディスはそんな彼の意向を尊重しつつ、考えを改めるよう説得に努めているという。
エイバルが出した異例の声明文。
ファリほど極端ではないにせよ、不安を抱えている選手は他にもいる。
練習再開を前に、乾貴士が所属するエイバルの選手と監督スタッフは連名で異例の声明文を出した。
「皆の健康が最優先されるべきであり、それは言葉ではなく行動で示さなければならない。その前提がなければリーグを再開する意味がない。我々は安全と保証を求めている」
これに対してテバスは「フットボールの練習より薬局に行く方が感染のリスクが高い」と反論したが、ある意味その言葉は的を射ている。
実際に薬局でウイルスをもらってくる選手がいるかもしれない。ラ・リーガはその危険性まではカバーしきれないからだ。
無症状のまま感染が発覚したジョエルはこのようにも話している。
「自分は責任を持って行動してきた。家を出るたびに手袋とマスクを付け、自分を守ってきた。それでも今、ウイルスを持っている」