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野茂英雄メジャーデビューから25年。
永遠に語り継がれるべき歴史的1日。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2020/05/02 20:00
25年前の1995年5月2日、ジャイアンツ戦に先発したドジャースの野茂英雄。5回1安打7奪三振で無失点と鮮烈なメジャーデビューを果たした。
「これ以上、何を望めばいいと言うんだい」
試合後の会見で野茂は淡々と表情を変えずに振り返った。
「相手の打者を観察したり、日本と大リーグの違いを考える余裕はなかった。ただ、マウンドに立てただけで満足だった」
笑顔は一切なく、既に5日後に控える次戦を見据えているかのようだった。
そして、トミー・ラソーダ監督は騒ぎ立つメディアを牽制するかのように言った。
「初めての登板で5回を1安打。これ以上、何を望めばいいと言うんだい」
「僕が最初にやらなくても……」
その後、彼が収めた大成功は周知の通りだ。13勝を挙げ、新人王、オールスターにも選ばれ先発投手の栄誉にも輝いた。メジャー実働12年で通算123勝は今でも日本人投手として最高峰の金字塔。それでも後年、彼はこんな言葉を残した。
「僕が最初にやらなくても、いつか誰かが、そんなに遠くない時期にやっていたと思いますよ」
彼らしい言葉と感じた。
いつの時代にも、崇高な精神のもとに高い志を抱き、道を切り開き、前に進もうとした者はいた。だが、結果なくして先駆者とはなり得ない。わずか1シーズンで「悪者」から「我々の誇り」へと、日本球界関係者の意識を変え、後へと続く選手に灯りをともした彼の勇気ある挑戦と残した結果は、歴史的偉人同様、「英雄(えいゆう)、HERO」だ。
1995年5月2日。この日は永遠に語り継がれるべき、歴史的1日だと思っている。