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「負ける」ことを思い知って急成長。
ノルディック複合・山本涼太の執念。
text by
山田流之介Ryunosuke Yamada
photograph byGetty Images
posted2020/04/30 18:00
FISワールドカップ・ノルディック複合の大会での山本涼太。目指すは北京冬季五輪でのメダルである。
世界上位に同い年の選手たちが。
その一方で、山本は「1戦1戦やるごとに、先が見えないような感じがして、すごく苦しかった」といった、決してポジティブではないコメントを吐露することもあった。
「(世界トップレベルの)どうやっても追いつけないだろうな、という差を感じてしまって。自分の中ではショックでした……」
圧倒的な結果を残し総合優勝を達成したヤール・マグヌス・リーベル(ノルウェー)や、同3位のビンツェンツ・ガイガー(ドイツ)は山本と同じ22歳。特にリーベルに関しては「シーズン前から別格だろうな、とは思っていましたが……すごい差になっていて。『あれ、こんなに強かったっけ』っていうのが印象です」と語っているように、同級生に対して大きな後れを取ってしまった格好となったのである。
目標は「五輪で金メダルを取ること」。
大いなる躍進と、さらなる世界の壁を意識した2019-20年シーズン。しっかりと世界の頂点を見据えた山本の目標は、「五輪で金メダルをとること」で変わらない。
シーズンが始まる前には、2年後に迫った北京五輪ではメダルが狙えるだろうと想像していた山本。しかし今シーズンを振り返ると、「『五輪で金メダル』という目標に対する自分の実力が伴っていない」ことを痛感した1年だったようだ。
少し目標値を下げたかのように「北京は『経験』だけで終わるのかなって思います」とコメントしたので、てっきり「なるほど、通過点としての北京なんだな」と思った次の瞬間、思いがけず強気な言葉が飛び出した。
「だから『経験』じゃなくて、どれだけ上の順位で終われるのか、そのためにはどうすればいいのかなって必死に考えている最中です」
心の中に秘めている山本の熱い思い、いわば「野心」とでも言うべきものが、少し見えたような気がした。
まだ山本涼太の物語は始まったばかりだ。22歳の若武者の挑戦から目が離せない。