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「負ける」ことを思い知って急成長。
ノルディック複合・山本涼太の執念。 

text by

山田流之介

山田流之介Ryunosuke Yamada

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photograph byGetty Images

posted2020/04/30 18:00

「負ける」ことを思い知って急成長。ノルディック複合・山本涼太の執念。<Number Web> photograph by Getty Images

FISワールドカップ・ノルディック複合の大会での山本涼太。目指すは北京冬季五輪でのメダルである。

「『負ける』が前提にあって、という……」

 昨2018-19シーズンにおいて、W杯の1つ下に位置するコンチネンタルカップで最高3位という成績を叩き出した山本は、シーズン途中、満を持してW杯へ挑むこととなった。徐々に結果が出てきたことで、少しずつ自信も芽生え始めていたという。とりあえず10番以内には入れるだろう――そんな考えでW杯に臨んだ山本だったが、結果は最高でも21位と厳しいものだった。

「自分が戦っていかなきゃいけない舞台は、そんなに甘いものじゃないな……」

 W杯を経験したことによって世界とのレベルの違いをはっきりと感じ取った山本は、素直に思いあがっていたことを認めざるを得なかったようだ。「勝てるだろう」という慢心が、間違いなくその敗因だったのだ。山本は世界のトップステージで戦うことによって、初めて自分の実力を俯瞰する機会を得たともいえる。

「だから、まずは挑戦者の気持ちでやろうと思っていました。自分は『負けるかもしれない』じゃなくて、『負ける』が前提にあって、という……。そこからどこまであがけるか、どこまで自分を出せるか、という方向に考え方を変えたことが、昨シーズンから大きく変わった部分だと思います」

渡部「お前はついていけるとでも思ったのか」

 もう1つ、山本の目を覚ますことになった象徴的なエピソードがある。

 1月12日、イタリアのバルディフィエメで行われた団体1回戦に、山本は渡部暁斗と共に「ジャパンI」のチームとして出場した。まずはジャンプで幸先よく首位に立ったジャパンIであったが、クロスカントリーで大きく順位を落とし、9位でレースを終えた……その直後のことだった。

「(団体戦が)初めてにもかかわらず暁斗さんと一緒に出させていただいたんですよね。緊張するじゃないですか。ジャンプは良かったのですが、(クロスカントリーで)走れなくて。(渡部に)迷惑をかけたと思って謝るじゃないですか。そしたら『なんで謝るんだ』って言われて」

「『結果は見えていたし、お前はついていけるとでも思ったのか』と言われた時に、確かに、って思って(笑)。

 現状を考えて、勝てるわけでもないですし。チームのことよりも、自分の最善を尽くすようにすべきなのじゃないかって」

 世界のトップを走る渡部からの「ダメ出し」を受けて、山本はよい順位を出すことよりも自らの「最善を尽くす」ことにフォーカスを置くようになったという。

【次ページ】 まずクロスカントリーで「最善を尽くす」と……。

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