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「負ける」ことを思い知って急成長。
ノルディック複合・山本涼太の執念。
posted2020/04/30 18:00
text by
山田流之介Ryunosuke Yamada
photograph by
Getty Images
ノルディック複合――読者のみなさんはこの種目をご存知だろうか。スキージャンプとクロスカントリースキー、2つの競技で競い合うノルディックスキーの花形種目であるノルディック複合。それぞれの競技で異なる能力を必要とするため、ヨーロッパではこの種目の王者は“キング・オブ・スキー”と賞賛される。(この「ノルディック/北欧の」のスキーとは別にアルプス地方で発達した滑降を主とする「アルペン・スキー」がある)。
そんなノルディック複合には、有力な選手を輩出し続ける、いわば「名門校」が存在する。早稲田大学だ。今年で創部100年を迎える早大スキー部であるが、ここから多くのオリンピックメダリストが誕生しているところに名門校たる所以がある。
例えば、1992年のアルベールビルオリンピック、続く'94年のリレハンメルオリンピックでの団体2連覇に貢献した河野孝典、荻原健司は2人とも早大出身である。特に荻原はW杯でも3年連続で優勝するなど、通算19勝を記録。輝かしい実績を残し、まさに“キング・オブ・スキー”として王者に君臨し続けた。
近年では渡部暁斗(北野建設)が2014年のソチオリンピック、続く'18年の平昌オリンピックで銀メダルを獲得。2017-18シーズンには自身初となるW杯での総合優勝も経験するなど、トップランカーの1人として長く世界の最前線で戦っている。
このように、日本のノルディック複合を引っ張ってきたのは、紛れもなく早大出身の選手たちなのである。
ノルディック複合に現れた新星。
そんな早大スキー部から、新たにスターが誕生しようとしている。
山本涼太、22歳。
今春早大を卒業したばかりの彼は、2019-20シーズンのW杯において、個人戦で2度の9位を記録するなど総合20位をマーク。同9位でシーズンを終えた渡部に続き、1シーズンを通してW杯を回るのは初めてにもかかわらず、日本人で2番目となる成績を残しているのである。