スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ビッグネームとコロナ禍の壁。
“人災”でMLBの偉大な記録が……。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byALFO
posted2020/04/25 09:00
ワールドシリーズ制覇を果たし、昨年11月ホワイトハウスを表敬訪問したナショナルズのマックス・シャーザー。
大天才テッド・ウィリアムズのケース。
'84年7月生まれのシャーザーは、今年36歳を迎える。'21年終了後にFAの資格を得るが、今季が流れれば、大台到達はFA契約以後に持ち越されるだろう。
年齢から考えても、まず堅いところと思われるが、30代後半になって急激に衰えたデヴィッド・コーンの例もあるから油断はできない。
コーンの場合は動脈瘤ができるという不測の病変に見舞われたためだが、一寸先は闇の世界だ。
こんなとき、だれしも思い浮かべるのが、大天才テッド・ウィリアムズの名前だろう。
第二次世界大戦に出征したウィリアムズは、1943年から'45年まで(つまり、シーズン開幕時24歳から26歳までの黄金期)を棒に振ってしまった。
彼の通算成績は、2654安打、521本塁打だ。あの3年間の空白がなかったら、3000本安打、600本塁打の里程標はわけなく突破していたにちがいない。
つくづく思うに、スポーツの敵は、戦争や疫病だ。どちらも避けることや、被害を小さくすることが可能な人災であるという事実を、われわれはもう一度噛みしめるべきではないか。