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夢の劇場で見たスコールズの一撃と、
「背番号22」から届いたメール。 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byGetty Images

posted2020/04/20 20:00

夢の劇場で見たスコールズの一撃と、「背番号22」から届いたメール。<Number Web> photograph by Getty Images

赤い悪魔のセンターハーフと言えばスコールズ。マンチェスター・ユナイテッドファン以外ならずともその印象は強いだろう。

右足ボレー弾に轟音のスタジアム。

 試合はペナルティキックのチャンスをウェイン・ルーニーが外して不穏さが増したが、ホームチームの優勢は揺るがなかった。

 そして前半のアディショナルタイムにハイライトが訪れた。ペナルティエリアの右からルーニーが高速低弾道クロスを送ると、ファーサイドで構えたスコールズが体を左に回転させながら右足でハードヒット。ボレーシュートを叩き込んだ。

 その瞬間、スタジアムは轟音に包まれ、彼は両手を広げて味方サポーターが陣取るゴール裏へと駆けていった。

 3-0で快勝したマンチェスターの夜。僕はアルコール禁止のスタジアムを離れて足早に近くのパブへ向かった。 

 入口に立っていた大柄で強面のガードマンが呼び止める。

「おい。ここはホームサポーターしか入れないぜ」

「明日、レスターへ来ませんか?」

 コートのポケットにねじり込んでいた赤いマフラーを掲げると、ニヤッと笑ったガードマンが体を横へずらして道を開けてくれた。立ったままカウンターにもたれて、ビールを口にして一息つくと、スマートフォンにメールの着信通知が届いているのに気づいた。送り主からは、こんな文言が書かれていた。

「スコールズ、良いゴールを決めたね。ところで僕、浦和へ帰ることに決めました。もし良かったら、明日、そこからレスターへ来ませんか?」

 そういえば彼もスコールズのことが好きだった。そして、はたと気づいた。スコールズが現役復帰して選んだ背番号は22。そして彼も、2007年に浦和へ移籍加入してからは、ずっと22番を背負っていた。

 明日はどんな話をしようか。多幸感に包まれるマンチェスターのパブで、僕は彼との邂逅に思いを巡らせていた。

 その10日後、浦和レッズはイングランド・チャンピオンシップのレスター・シティに所属していた阿部勇樹が、約1年4カ月ぶりに復帰することを発表した。

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