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“写真家”ランディ・ジョンソンも!?
911の時のWシリーズ、濃厚な思い出。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2020/04/05 11:30
カーレースの写真を撮影していた当時の、“フォトグラファー”ランディ・ジョンソン。
ハンパない「圧」を感じさせる人だった。
当時のジョンソンはマウンドを降りてもハンパない「圧」を感じさせる人だった。
それを生で体験したのは、彼がワールドシリーズ優勝を果たした翌年(2002年)、24勝、防御率2.32、334奪三振でナ・リーグの投手部門の三冠王となり、4年連続通算5度目のサイ・ヤング賞を獲得するシーズンの途中だった。
試合前のクラブハウスで自己紹介をしてインタビューを申し込んだ時、無表情で「What do you want(何が欲しいんだ)?」と威嚇された。
ビビりながらも、正直に「日本では『気持ちで投げる』というような表現があります。あなたもそんな気持ちを持って投げているのかなと疑問に思いまして」などと説明すると、「Hold on a second(ちょっと待て)」と言いながらデカイ手で合図をしてクラブハウスのどこかに姿をくらますと、紙コップに入れたコーヒーを啜りながら戻ってきて「Go ahead(どうぞ)」と言った。
「『気持ちで投げる』の意味は分かる」
唐突にインタビューが始まったことに戸惑いながらも、「左打者はあなたが背中目掛けて投げてくると感じているし、右打者は懐深くにブラッシュボールを投げてくると感じているようですが」などと下手な英語で尋ねると、彼は一瞬だけ笑い、すぐに真顔に戻ってこう答えた。
「今の私は昔ほどコントロールが悪いわけじゃないのに、いまだにそういうイメージがあるのは、若い頃の私のコントロールが本当に酷かったからかも知れない。
私の体がほかの多くの投手に比べて大きいことや、他の多くの投手よりもハードに投げることも関係あるだろう。だが、今は(打者の)インサイドにしっかりコントロールして投げている。だから、打者を(死球で)痛めつけるつもりはあるかと言えば『NO』だね。
ただし、威嚇しているのかと聞かれれば『YES』だよ。なぜなら、私は打者と1対1で対決するのが好きだからだ。だから、あなたが言う『気持ちで投げる』の意味は分かる」
背筋がゾッとするような、イメージ通りの答えだった。