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“写真家”ランディ・ジョンソンも!?
911の時のWシリーズ、濃厚な思い出。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2020/04/05 11:30
カーレースの写真を撮影していた当時の、“フォトグラファー”ランディ・ジョンソン。
大学時代は写真の勉強をしていたジョンソン。
ジョンソンの引退後、当時カブスの実況中継で解説をしていたダイヤモンドバックスのボブ・ブレンリー元監督と、その時の話をしたことがある。
正直に「あの時は怖かった」と言うと、ダイヤモンドバックス史上唯一のワールドシリーズ優勝監督でもあるブレンリーは、とても楽しそうに笑いながらこう言うのだった。
「君がそう感じたことは責められないよ。なぜなら私だって、クスリとも笑わない現役当時の彼のことがよく分かんなくて、引退後、表情が和らいだ彼に再会する度に『これって、いったい誰なんだろう?』なんて思っちゃうぐらいだからね!」
ブレンリーは「現役時代とはまったくの別人のようになった」と言ったが、それが本当のことなのだと実感したのは、実は野球の現場ではない。
2015年の10月、テキサス州オースティンで行われた自動車レースのF1アメリカGPを取材した時、引退後、大学時代に専攻していた写真を勉強し直し、「フォトグラファー」として仕事していたジョンソンとF1の取材現場で遭遇したのだ。
異常に愛想が良かった“フォトグラファー”。
ヨーロッパのメディアが多いF1業界には彼を認識できる人は少なく、プレスルームの椅子に座ってカメラを弄る彼の元に歩み寄り、自己紹介をするのはとても簡単だった。
「Nice to see you.(会えて嬉しいよ)」
初対面じゃないんだけどな、と思いながら見上げたその顔には、人懐っこい笑顔が浮かんでいた。
「昔、インタビューしたことがあります」と伝えると、彼はイチローや松井秀喜の名前を口にしたり、西新宿にある海賊版のCD店の話をしたり、こちらが引くぐらい愛想が良かった。