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新しい地図・香取慎吾×パラ柔道。
“世界最大級アスリート”の秘密。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/03/30 09:00
正木健人と組み合う香取慎吾。パランピアン柔道家のパワーをじかに感じ取った。
苦手意識のあるイラン選手。
香取 今年の東京パラでライバルになりそうな選手はいますか?
正木 ライバルというか、苦手意識を持っている相手はいます。これまで2戦2敗のハムザ・ナドリというイランの選手です。
香取 アスリートの苦手意識というのが僕にはわかりにくいんですけど、実際に組んでみて伝わってくるものなんですか?
正木 その選手は体は細いんですが、身長が僕より高く、手足が長い。だからいわゆる「間合い」が広いし、懐も深いんです。
香取 なるほど、組み合っても腕が長いと技をかける感覚も変わりそうですね。
正木 僕が技に入っても相手との間に隙間ができて届かないんです。技のかけ方には2つのタイプがあって、現役時代の井上康生さんのように瞬発力でスパッと懐に飛び込んでいくタイプと、相手を引き寄せて自分の体を懐に入れていくタイプ。僕は後者ですが、隙間ができると技がすっぽ抜ける感じがあり、相手に技を返されやすくなってしまうんです。それにナドリ選手の柔道が、いわゆる「勝ちにいく」柔道なんです。
柔道に「型」がないんです。
香取 どういうことですか?
正木 一本を狙っていくのではなく、抜け目なくポイントを稼いだり、反則を狙ったりしてくる。こちらの焦りをうまく利用してくるタイプで、柔道に「型」がないんです。だから対策を立てづらくて。
香取 対戦相手がいる競技の難しさですね。練習で対策を練るにしても、健常者でも同じタイプの選手もいないでしょうし。
正木 そうなんですよ。
香取 パラリンピックまで半年を切りましたが、いまの調子はいかがですか?
正木 去年は、怪我を繰り返してしまい、お祓いにいったほうがいいかなって思った時期もあったんです。その影響もあって50%というのが正直なところ。ただ、僕は性格上、時間がなくなって初めてやらなければいけない、という気持ちになるので。
香取 いいですね、僕と同じですよ(笑)。ドラマや映画のセリフは現場に入ってから覚えるんです。事前に一度は台本に目を通しておくけど、セリフを暗記するのは撮影当日。毎日その日にやる最初のシーンを覚えて、そのシーンを撮っている最中に次のセリフを覚えるんです。「なんでそんな短時間で覚えられるんですか?」と驚かれるけど、だって覚えないとダメだから。
正木 わかります、その理屈。僕も今から追い込んで、半年でグッとあげていきます。