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新しい地図・香取慎吾×パラ柔道。
“世界最大級アスリート”の秘密。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/03/30 09:00
正木健人と組み合う香取慎吾。パランピアン柔道家のパワーをじかに感じ取った。
少しでも視力がある場合だと……。
香取 なるほど。光は感じますか?
正木 はい。でも眩しさが苦手で、太陽や蛍光灯、それに光が壁や床に反射してくるのもチカチカする。本当はサングラスをしてちょうどよいのですが、まぁ生まれたときからこの状態なので慣れました。
香取 見えないと、聴覚などほかの感覚に頼ろうとするといいますよね。
正木 はい、視覚障がいがある人は、声で他人が誰かを認識することが多いのですが、僕は中途半端に視力があるので、どうしても「見よう」としてしまう。香取さんが以前取材されたパラ柔道の永井(崇匡)は全盲で両目義眼ですが、耳がすごくいいし、空気の跳ね返り方やオーラで人を見分けたりする。後ろに立っただけで「正木さんですか?」と声かけてきますから。
全盲の選手は反応が0.1秒くらい遅れる。
香取 すごい。でもそうやって能力が違う3つのクラスの選手が一緒に試合をするわけですよね。ぶっちゃけ、分けたほうがいいと思ったことはありますか?
正木 正直いうと、それは思いますね。
香取 思うんだ!(笑)
正木 いま話に出た永井はパラ柔道の日本代表のなかでも一番運動神経がいいと思いますが、その彼でさえ僕らが技をかけ、それを「受けよう」としたときの反応が遅い。僕の感覚では全盲の選手は0.1秒くらい遅れます。特に止まった状態からの技がかかりやすくなってしまう。僕も目隠しをして柔道をしたことがありますが、動きながらだと相手が技を仕掛けてくるのが予想できるのに、組んで静止していると相手の動きを感じとりにくいので予想が難しい。細かい点が勝負を左右するので、全盲と弱視は分けたほうがいいかな、と。
香取 ブラインドサッカーの選手と対談をしましたが、彼らは条件を平等にするため全員アイマスクをしますよね。
正木 柔道もそうすべきだと思います。
香取 パラスポーツはルール変更も多いので、改善されていくといいですね。
正木 ただ、現時点では世界を見渡しても競技人口が少なく、僕の100kg超級は世界大会で20人程度。クラスを分けるのは現実的ではないのかもしれません。