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新しい地図・香取慎吾×パラ柔道。
“世界最大級アスリート”の秘密。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/03/30 09:00
正木健人と組み合う香取慎吾。パランピアン柔道家のパワーをじかに感じ取った。
五輪を目指していた選手がパラに。
香取 いまパラ柔道のレベルはあがっているんですか?
正木 自分の階級では、ロンドンパラ後に何人か強い選手が急に出てきて、リオ後に全体的なレベルがあがりました。世界ランキングだと僕はいま実質的に3番手です。他国だとオリンピックを目指していた選手が落選してパラに回ってきたりもしますね。
香取 ロンドンがきっかけなんですね。他の選手からロンドンパラは素晴らしかったという話を何度も聞いたのですが、初出場だった正木選手はいかがでした?
正木 正直にいうと、普通の地方の大会に出場する……という気分だったんです。
香取 えっ、どうしてですか?
正木 当初、大学を卒業したら警察官か刑務官になろうと思って試験を受けたのですが、視力検査で落ちてしまって。そこであん摩マッサージ指圧師の国家資格をとろうと通った盲学校でパラ柔道と出会ったんです。そして'11年に世界大会に出ると優勝、その次の大きな大会がたまたまパラリンピックだったんです。どういう大会かほとんど理解せずに「出られるから出た」というか。僕は無名だったのでロンドン前は取材も一度しか受けたことがありませんでした。
「やらされている」から一転。
香取 それで金メダルですか!
正木 ただ、ロンドンオリンピックに天理大の先輩である穴井隆将さん(現・天理大柔道部監督)が出場されていて、同じ会場で試合ができるのは嬉しかったです。
香取 金メダルをとると周囲の見方もガラッと変わったんじゃないですか?
正木 生活が180度変わりました。それまでは人前で話をするのも苦手だったのに、講演会やイベントに呼ばれたり、テレビに出たり。そんな生活を半年くらいして初めて「俺がやったことって凄いことだったのかな?」と思い始めて(笑)。そこで柔道に対する意識も変わりました。学生時代はきつい練習を「やらされている」という感覚だったのに、リオでもう一度金メダルをとるという目標ができ、自発的に強くなりたいと思うようになった。ただ、リオは負けちゃったんですけど。
香取 銅メダルでも十分すごいですが、正木選手はあまりパラリンピックを意識しないほうがいい気がしますね。
正木 そうかもしれません。