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まるで「違う人間」のような充実。
菊池雄星、2年目の覚醒への手応え。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2020/03/15 08:00
今月5日、パドレス戦に登板した菊池。「昨年と比べると、僕は既にかなり良い状態にあります」と自信をのぞかせる。
全球種のバージョンアップに着手。
若手を大胆に起用するなど中長期的なチーム改革に取り組むチーム事情を、菊池自身も十分に理解しているからこそ、昨オフは大胆な改造に着手した。見据えるのは、目先の勝敗ではなく、今季、そして来季もトップレベルで戦える体作りだった。
昨シーズン終了後、亡父の墓参も兼ねて一時帰国した一方、11月までにキャンプ地アリゾナ州内に自宅を購入。家族を伴い、ほぼ休む間もなく、2年目への準備を始めた。
その間、専門家の協力を得て「チーム菊池」を結成し、フォームや投球などの詳細を科学的にも徹底分析。全球種のスピードアップ=バージョンアップに取り組んだ。
「僕は常にこの先にピークがあると思ってやってきているので、まだまだ伸びると思いますし、体力的にも技術的にも精神的にも、ここからここからと思って毎年やっています、楽しみですよね、毎年野球が楽しくなるし、毎年難しくなるんです」
そのイメージは既視感があったかのように、投球に表れた。
速球は最速155km、カーブも140km。
迎えたオープン戦。
初戦から速球は最速155キロ、スライダーは150キロ、カーブは140キロを計測した。基本の総排気量を上げることで、ギアの出力が上がるスポーツカーのように、各球種のスピードと力感がアップした。
3月5日のパドレス戦では、3回無安打無失点2四球5奪三振と快投。ホップするような快速球だけでなく、超高速の変化球がストライクゾーン内で動くことで、相手打者はお手上げ状態だった。
試合後のスコット・サービス監督を「すばらしかった。オフの間に取り組んだことが、結果になって表れている。違う人間のようだ」と、すこぶる上機嫌にさせるほどだった。