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涙が止まらないマイケル・ジョーダン。
コービー追悼式で告白した秘密の友情。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/03/06 20:00
ボロボロとこぼれ落ちる涙もそのままに、コービー・ブライアント追悼のスピーチを続けたマイケル・ジョーダン。
「他の人にないような情熱を持っていました」
ジョーダンはコービーのことを、自分の洋服やシューズなど好き勝手に借りていく弟に喩えた。
コービーは洋服やシューズの代わりに、ジョーダンの知恵を借りた。夜中でも構わず電話やテキストメッセージで連絡してきて、色々と聞いてきたという。
「彼はよく、11時半、2時半、3時──それも早朝の──に電話をかけてきたり、テキストメッセージを送ってきたりしました。ポストアップのムーブやフットワーク、時にはトライアングル(オフェンス)について話しました。最初は腹立たしかったのが、そのうち、情熱に変わっていきました。この若者は、他の人にないような情熱を持っていました」
「私の一部が亡くなりました」
ジョーダンもコービーも、どちらかというと夜の睡眠は短いと、グローバーから聞いたことがある。
夜中、世の中が寝静まった時間に話し込む、眠れない2人のスーパースター。2人ともそんな時間を大切にしていたからこそ、公に語ってこなかったのかもしれない。
ジョーダンは、そんな時間に連絡してくる若いコービーを、最初のうちは疎ましく思っていたようだ。しかし、好奇心旺盛なコービーは、そんなことお構いなしに懐に飛び込んできた。
最高の選手になるためには、その方法を誰よりも知っている人に直接聞くのが一番手っ取り早く、確かだからだ。
「彼はなれる限りで最高のバスケットボール選手になりたがっていました。彼のことを知るにつれ、私は私がなれる限りで最高の兄になりたいと思うようになりました。そのためには、腹立たしいことも、夜中の電話も、間抜けな質問も我慢しなくてはいけなかったんです」
そう語るジョーダンの目からは、話し始めてすぐに涙が流れ落ち、それを拭おうともしなかった。
「コービーが亡くなったとき、私の一部が亡くなりました。こうやってアリーナの中、世界中の皆さんを見渡すと、皆さんの一部も亡くなったことがわかります。そうでなければ、皆さんもここに来ていないでしょう」