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渋野日向子が笑うと周りも笑う。
「変顔!」からの、最高の表情。
posted2020/02/29 11:50
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Shin Suzuki
撮影場所は会議などを行う都内の大きなホールだった。
その一角にセットを組み、撮影の準備はもう済ませてある。我々が待っていたのは渋野日向子だった。
撮るのは「笑顔」を撮らせたら右に出るものはいない鈴木心さん。“スマイリングシンデレラ”を撮るのにこれ以上の適任はいないだろう。
待っている間に鈴木さんが部屋の対角を探り始めた。窓のシェードが閉じられていてホールは薄暗かったが、どうやらそれが開けられるらしい。そこからは陽射しが差し込む。決断は早かった。用意していたセットを捨てて、そちらの窓際に移動したのだ。
メークを終えた渋野が入ってくる。注ぎ込む太陽の光が、彼女の表情に人工的な照明で作ったのとは違う明と暗を作り出す。
「変顔いきましょう!」
与えられた時間は10分。渋野は場を緊張させるようなキャラクターではないが、それでも初対面のカメラマンと被写体が、最初の1枚からいきなりいい写真が撮れるものではないのだろう。
鈴木さんは何度も何度も渋野に言葉を投げかけながら、周囲にいるスタッフにも声をかけ、その場の空気を解きほぐしていく。横にいた編集者に突然タイムキーパー役を命じ、スマホのストップウォッチで時間を測らせてあえて慌てたそぶりを見せたりした。
にこりと笑って、きりりと引き締まって。見たことのあるもの、見たことのないもの。シャッターを切るたびに、いろんな表情の渋野がモニターに映し出されていった。
あっという間に10分は過ぎた。タイムキーパー(編集者)が叫ぶ。
「ロスタイム入ってます!」
試合終了は目前。ここで鈴木さんは最後の一押しに出た。
「変顔いきましょう!」