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柿谷曜一朗と濃密な15分45秒の対話。
あの移籍騒動とセレッソ愛、30歳。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2020/02/21 18:00

柿谷曜一朗と濃密な15分45秒の対話。あの移籍騒動とセレッソ愛、30歳。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

30歳の節目を迎えた柿谷曜一朗。セレッソ大阪の象徴的存在として、唯一無二の創造性をピッチで表現してほしい。

城福さんから言われた「楽しめ」。

 この代表チームの指揮官を務めたのは、現在、サンフレッチェ広島を率いる城福浩監督だ。まさに今回のインタビューの2週間前、セレッソとサンフレッチェの練習試合のあと、ふたりが満面の笑みで再会を喜ぶ姿を目撃したばかりだった。

「城福さんは当時、『とにかく楽しめ』と言っていた。『ボールを動かせ』『人も動かせ』と。城福さんのサッカーは本当に楽しかったし、城福さんに言われる以上のことをやってやろう、城福さんを驚かせてやろう、と思ってましたね。U-17代表とJ1では責任もプレッシャーも全然違うから、城福さんも今、理想と現実の間でうまく折り合いを付けないといけないと思いますけど、僕にはそれがすごく分かるというか。

 監督と選手では全然違うかもしれないけれど、監督の求めることをこなしながら、自分の良さも出す方法があるんじゃないかと思ってこの半年間やってきて、その道筋をある程度見つけられた。あとは、どの割合でどっちに傾けるかっていう感じですね」

 '18年には第1子となる長女が生まれ、'19年11月に1歳の誕生日を迎えた。彼女の存在も新たなモチベーションになっているという。

「まだ僕が何をやっているか分かってないんですけど、テレビでサッカーをやっていたり、ラグビーのワールドカップを見ても、『パパ、パパ』って言うんです。それで、ちょっと焦りが出て。そのうちすぐにバレるぞって(苦笑)。ちゃんとせな、っていう気持ちが芽生えたのは確かですね。やっぱり、いいところを見せたいじゃないですか。そういうのは初めての感覚ですね」

限界が来たなと思ったら……でも。

 今年の1月3日には、柿谷自身も30回目の誕生日を迎えた。

「自分の中で限界が来たなと思ったら、僕は潔く辞めます。でも、まだまだやりたいことがあるし、やってみたいことがいっぱいある。ここ最近、あまりにもインパクトを残せないシーズンが続いているので、もう1回、という気持ちはめっちゃあるし、ちょうど30になって、まだまだできますよ、っていうところを見せるには、すごくいい年なんじゃないかな、って思いますね」

 30歳という節目を迎え、ロティーナ戦術の中でチームを躍動させ、自分も輝く――。それが今年、自身に課せられたテーマだということを柿谷は分かっている。

【次ページ】 唯一無二の才能と魅力を持つ男。

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柿谷曜一朗
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