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なぜマンCは2年間CL参戦禁止に?
現地発“バレンタインの惨劇”真相。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/02/17 12:00

なぜマンCは2年間CL参戦禁止に?現地発“バレンタインの惨劇”真相。<Number Web> photograph by Getty Images

グアルディオラ監督のもとで王朝を築き上げたマンチェスター・シティ。しかしFFP規則によって、その時代が終わりを告げてしまうのか。

UEFAの実行委にはPSG会長がいる。

 シティ経営陣は、不法な入手や改ざんの可能性もある『リークス』による情報ということもあり、「判断の根拠になどなり得ない」としている。“アブダビ陣営”としては国家間で摩擦のあるカタールが、『リークス』に関与しているとの見方もしているようだ。

 漏洩されたメールの内容に関して詳細な情報開示を拒み、「捜査への非協力的な姿勢」が処分対象の行為に含まれる結果となったのも、そのためだ。

 なお同連盟の実行委員会には、カタール資本の配下にあるパリ・サンジェルマン(PSG)のナセル・アルケライフィ会長が名を連ねている。

 中立的な立場にあるCASへの提訴に際しては、FFP自体が「フェアか否かを問う」意識もあるに違いない。もちろん漏洩された情報の合法性はさておき、実際は800万ポンド(11億円強)のスポンサー収入を大幅に膨らませた収支報告があったなら、シティへの厳罰は当然だ。

 ただUEFAはFFP規則違反の取り締まりを、公平に行なう必要がある。例えば、シーズンを跨いではいるものの、11カ月の間にネイマールとキリアン・ムバッペの獲得に約420億円もの移籍金を費やしたPSGを処分不要とした判断には、シティ関係者ならずとも首を傾げたくなる。

会長は対決姿勢、では現場は?

 シティのカルドゥーン・アルムバラク会長は「(提訴での)勝算は十分。真実が正義を勝ち取ることになる」と、冷静に述べている。もちろんアブダビ出身の敏腕ビジネスマンの中では、法廷での争いに臨む闘志も燃えていることだろう。

 なにしろ6年前にFFP違反で処分を受けた当時から、「罰金を払うぐらいなら、3000万ユーロで世界有数の弁護士50人を雇って10年間(UEFAと)法廷で争い続ける」意思を持つ経営者なのだから。

 スイスはローザンヌの法廷闘争にトップクラスの弁護士総動員で臨む覚悟は、フェラン・ソリアーノCEOの発言からも窺える。チームのウィンターブレイク明け初日に当たる2月15日、監督と選手たちを前に「確かな証拠を提出して、とことん争う用意がある」と告げているからだ。

 現時点では、来季を待たずにCASでの判決が下ると見られている。

 ピッチでは闘志満々のシティ指揮官が、今季CL優勝を目指して総攻撃に出ることも間違いない。処分決定直後の報道では、まるで悲劇の主人公のように扱われている。

 前述の『ミラー』紙は、両手を頭の上に乗せて呆然とした表情を浮かべるグアルディオラの写真、『ガーディアン』紙は眉間に皺を寄せてうつむく指揮官の姿を載せた。『サン』紙は英語で禁止を意味する「バン(ban)」を絡めた語呂合わせで、「チキ・チキ・バン・バン」ならぬ、「シティ・シティ・バン・バン」と、少々陽気な見出しをつけた。

 グアルディオラ自身のショックは報道よりもはるかに小さいと思われるが、欧州最高レベルにあるクラブでの将来設計が、今回の処分で狂った主力選手がいるかもしれない。

【次ページ】 デブライネら全盛期の主力は……。

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