プレミアリーグの時間BACK NUMBER
英国で愛された“2m”FWクラウチ。
引退後も引く手数多なユーモアさ。
posted2019/07/19 17:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
7月12日、プレミアリーグの“大物”が引退を発表した。身長201cm。物理的なサイズも大きいピーター・クラウチだ。
現役最終シーズンとなった昨季は、前半戦を2部に降格しているストークで、後半戦の大半を今年1月に移籍したバーンリーのベンチで過ごすことになった。
38歳でスパイクを脱ぐ意を固めたセンターフォワードは、世間のリアクションを見ても「ビッグプレーヤー」だったと思われる。SNSなどを通じて20年を越すキャリアを称え、第2の人生にエールを贈る人々がたくさんいる。クラウチを「レジェンド」と呼ぶ者は、7年半に渡って在籍したストークのファンだけではない。かくいう筆者もクラブの垣根を超えたクラウチ好きの1人だ。
代名詞はロボットダンス。
その実績が「レジェンド」と呼ばれる域に達していないことは、誰もが承知している。ユースから昇格したトッテナムでプロ契約をかわしたが出番がなく、一軍で頭角を現したのはQPR(2部)に移籍した2000-01シーズン。翌シーズン後半のアストンビラ時代からプレミアのピッチを経験したが、優勝にも個人タイトルにも縁がなかった。
2005年から3年間在籍したリバプールでは、キャリアで唯一の主要タイトル獲得となるFAカップ優勝を遂げ、CLのガラタサライ戦では華麗なオーバーヘッドを決めて決勝進出も果たしたが、途中出場した決勝では敗れた。
サポーターが奏でるクラウチ讃歌「デカいぞ、レッズの一員だぞ、ベッドから足がはみ出るぞ」は、愛嬌はあるが凄みはないチャントだった。
2009-10シーズンに復帰したトッテナムでは、CL出場枠を争っていたマンチェスター・シティとの直接対決で決勝点を決め、クラブ史上初のCL出場へ導いた。だが翌シーズンのCL準々決勝第1レグでは前半早々にイエローカード2枚で退場を命じられ、レアル・マドリー相手に大敗の一因となってしまった。
2010年までの5年間で42試合に出場したイングランド代表では、計22回の得点シーンよりも、ハットトリックを決めた親善試合ジャマイカ戦におけるゴールパフォーマンス、ロボットダンスの方が有名だろう。