バレーボールPRESSBACK NUMBER
Vリーグで嫌がられる男の観察力。
白澤健児が見せるバレーの面白さ。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byV.LEAGUE
posted2020/02/14 11:00
パナソニックパンサーズの白澤健児。エース清水邦広からの信頼も厚い。
「バレーが好きなんでしょうね」
自分を極めるよりもそろそろ後輩を育てることに目を向けたほうがいいのではないか。そう思ったこともあるし、実際に現役から退く意志をチームに伝えたこともある。だが、それでもやはり立ち返る。
「先のことを考えると、いつまでできるんやろ、と不安に思うこともあります。でも毎年、やると決めた以上はやり抜く責任があるし、どれだけしんどくても中途半端にできない。何より、負けるのは悔しいけれど、負けた相手とまた対戦できるのはすごく楽しいんです。今、この年齢になってもそう思うから、やっぱり、バレーが好きなんでしょうね」
ブロックだけ見れば十分、勝利の立役者と呼ぶにふさわしかったジェイテクト戦の後、「あまり目立たないけれどチームの軸」と白澤を称えた清水が笑いながら言った。
「サーブやブロックでブレイクを取ってくれるけれど、『ネットインサーブもあるから気をつけろ』と言われていたカジースキのサーブが取れなかったり、凡ミスもする。ああいう1本をちゃんと取ってくれたら、もっとチームの中の信頼度も上がると思います」
「ええって」と制しながら、清水の隣で楽しそうに白澤も笑う。
相手をねじ伏せるブロックか、はたまた来るとわかっていたイージーボールを落とす姿か。愛すべき仕事人は、来るファイナルの舞台でどんなプレーを見せるのか。
ただ、間違いなく言えるのは、たとえ目立たなくても、勝利を左右する大事な1本にはきっと、白澤が絡む。決して派手でなくとも、必ず。そして思うはずだ。やっぱりバレーボールは面白い、と。