バレーボールPRESSBACK NUMBER
Vリーグで嫌がられる男の観察力。
白澤健児が見せるバレーの面白さ。
posted2020/02/14 11:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
V.LEAGUE
閑古鳥が鳴く。冗談ではなく、目視で数えられるのではないかと思うほど、観客の数が少なかった時代はそう遠くない。同じVリーグ男子、わずか数年、一度高まった熱で、こうも違うのか。
レギュラーラウンド最終節を控えた2月8日。ジップアリーナ岡山はスタンド席には立ち見が出るほどの大盛況だった。地元・広島にほど近い岡山で、初のホームゲーム開催となったJTサンダーズ広島もさることながら、おそらく、開門前からよりよい席を求めて行列をつくっていた人たちの、お目当てはこの日の2試合目。レギュラーラウンド1位を争うパナソニックパンサーズと、ジェイテクトSTINGSの一戦だった。
昨秋のワールドカップで一躍スターダムにのし上がったジェイテクトのエース西田有志と、2007年のワールドカップから日本代表として活躍、'18年には選手生命を脅かす大けがから奇跡のカムバックを果たし、昨年日本代表にも復帰したパナソニックのエース清水邦広。
日本が誇るサウスポーエースが相まみえる。しかも、勝てばレギュラーラウンド1位、つまり決勝進出が大きく近づく大事な一戦なのだから、期待も高まり、客席も埋まらぬはずはない。
バレーボールは個人スポーツではないのだから、1人のエース、ヒーローがいるから勝てる、というほど甘くはない。とはいえ人気商売でもある以上、個人に注目も集まる。
終盤の大一番、勝利を引き寄せるのは西田か、清水か。
試合を動かしたのは、どちらでもない。目立たずとも、完璧なまでに責務を果たす仕事人。ミドルブロッカーの白澤健児だった。
「一番見るべき選手は白澤さん」
Vリーグでプレーする、多くの選手にたずねることがある。
対戦して、最も嫌な選手は誰か。そして、その理由は。
もちろん人の数だけ答えがあり、名指しされる選手は違う。だが、おそらく最も多くの選手が「嫌」と名を挙げたのが白澤だ。
今季、通算230試合出場を達成し、Vリーグ栄誉賞を受賞したウルフドッグス名古屋の近裕崇に至っては、こう断言した。
「ブロックに関して、いい選手、うまい選手はたくさんいます。でも一番見るべき選手は白澤さん。とにかくムダがないし、でも大事なところは絶対逃さない。パナソニックが強いのは、白澤さんがいるからです」