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Vリーグで嫌がられる男の観察力。
白澤健児が見せるバレーの面白さ。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byV.LEAGUE
posted2020/02/14 11:00
パナソニックパンサーズの白澤健児。エース清水邦広からの信頼も厚い。
エリートとは程遠い経歴。
身長や最高到達点、さらには出身大学。プロフィールだけを見れば、白澤自らも「自分は例外」と言うように、いわゆるエリートとは程遠い。事実、関東一部リーグ出身者が多数を占めるパナソニックで、福岡大出身の白澤は'07年の入部直後から戸惑うことしかなかった、と振り返る。
「そもそもローテーションすらよくわかっていなかったんです。『S6』と言われても、その時ミドルがどこにいて、リベロがどこにいる、という基本自体よくわからない。そんな状態で周りは全員代表選手で、今までテレビで見て来た人たちといきなり一緒にプレーする。高さも速さも全然違うし、自分だけ何もできない。とにかく全部、上がったボールはブロックで追いかけよう、追わなきゃ、と必死でした」
先輩には当時の日本代表で主軸を担った宇佐美大輔や山本隆弘、1年下にはリベロの永野健がいて、2つ下の代は清水と福澤達哉。日本代表選手がズラリと揃うチームの中、白澤は1年目からミドルブロッカーのレギュラーに定着し、試合出場を重ねてきた。それだけでも十分、胸を張れる要素ではあるのだが、当時から常に思い続けたことは1つ。
「こんなにメンバーが揃っている中で、負けたら俺のせいや、と。それは、今も変わらないです」
セッター深津も唸る「観察力」。
自己評価は常に厳しい。だが、周囲の評価はそれを遥かに上回るほど高い。なぜか。
その理由を同じパナソニックのセッター、深津英臣はこう見る。
「とにかく観察力がすごい。たとえばチーム内でA・B戦をやっていても、長年やっているからというだけでなく、白澤さんは僕のクセを全部把握して動くんです。試合中もあえて、あるコースを空けておいて終盤で締めたり、いろんな駆け引きをしながら勝負所での外国人選手や相手のクイック、この1点が左右するという大事なところは絶対止める。味方だとこれほど頼れる存在はいないけれど、敵だったらめちゃくちゃ嫌です」