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ソフトバンクにまたも育成の星が。
尾形崇斗のストレートと胆力を見よ。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2020/02/07 11:30

ソフトバンクにまたも育成の星が。尾形崇斗のストレートと胆力を見よ。<Number Web> photograph by Kyodo News

ソフトバンクの分厚い選手層の中でも、尾形崇斗の存在感はずぬけている。この名前、ぜひ覚えておいてほしい。

キャンプで折った2本のバット。

 宮崎春季キャンプ3日目の2月3日、尾形はフリー打撃に登板した。一軍で昨季93試合に出場した高田知季とまず対戦。球種を伝えて投げる練習だが、2球目に空振りを奪い、4球目から8球目は前に飛ばないファウル。その間にバットを1本へし折った。19球を投げて安打性はゼロ。

 続く「同じ育成なのでめちゃくちゃ意識した」という砂川リチャードには1本だけ左翼越えの当たりを打たれたが安打性はそれだけで、お返しとばかりにまたもバットを1本折ってみせた。

 工藤監督は「この時期に150キロ近い球を投げられると打者はなかなか打てないよ」と野手をフォローしつつも、「ボールの伸びやキレはよかった。空振りやファウルも自信になるだろうね。初めてのA組だしね」と笑顔で話していた。

「これと決めたらとことんやる性格なんです」

 この尾形という投手。投球自体に見応えあるのはもちろん、プロ魂というか彼自身の人間性がじつに魅力的なのだ。

 プロ1年目の春先、肋骨の疲労骨折でしばらく戦列を離れた。その原因を探ると、肩回りだったかのインナーマッスルが理想値よりも1、2ミリ足りないことを指摘され、それが悔しくて必要以上にトレーニングを頑張った結果の故障だったようだ。

「これと決めたらとことんやる性格なんです」

 昨年は先述したように「奪三振」で注目を集めるようになったが、筆者がそれを気にするようになったのは、尾形自身からのアピールがあったからだった。取材に行くたびに奪三振率を自己申告してきた。

 試合前には「今日も三振を取ってきます」と威勢よく言い放ち、1イニング3者連続三振で片づける。「やりましたよ」とにやり。自分のウリが何か、どうすれば目を向けてもらえるのかを知っている。

【次ページ】 大ピンチの登板に「よし来た」。

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