野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンクにまたも育成の星が。
尾形崇斗のストレートと胆力を見よ。
posted2020/02/07 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ホークスの育成はやはり宝の山だ。今年もまた、とんでもないピッチャーが頭角を現そうとしている。
背番号120、尾形崇斗。'17年育成ドラフト1位で学法石川高校(福島)から入団。甲子園出場はなかった。育成選手だから一軍出場実績はまだゼロだ。むしろ、プロ入りしてからの2年間で公式戦マウンドに上がったのは、二軍ですら通算5試合しかない。
工藤公康監督はその右腕をこの春季キャンプでA組に選出した。
なぜなのか――。
ホークスには三軍がある。主に独立リーグや社会人を相手にする昨シーズンの非公式戦では25試合に登板して3勝1敗、防御率1.84の成績を残した。特筆すべきは58.2投球回に対して奪った三振が86を数えたことである。
尾形の魅力はストレートだ。とにかく速くて、しかも伸びる。藤川球児の全盛期の「火の玉ストレート」に類似している。
明らかに育成レベルではない。
一度でも目にすれば、もう三軍レベルでも育成でもない桁違いのピッチャーであることは明らかだった。ただ、シーズン中はなかなかNPB相手に登板することがなく、その本来の実力を測り知るシーンに恵まれなかった。
ようやく注目を集め始めたのが、昨年10月の秋季教育リーグ「フェニックスリーグ」だった。尾形はNPBのホープ相手に、さらに一段階上の投球をしてみせたのである。
計6試合にすべてリリーフで登板し、8イニングを投げて被安打1無四球無失点。奪った三振は18個だ。じつに24アウトの75%を三振で取ったのだ。奪三振率に換算して「20.25」という異次元の数値を叩き出した。
その後、球団は期待を込めて台湾でのウインターリーグへ武者修行に送り出した。すると、異国の地でも好投。10試合で3セーブを挙げて、防御率0.77。11回2/3で23三振を奪い、奪三振率は「17.74」だった。