バレーボールPRESSBACK NUMBER
“約束”を果たした優勝請負人。
吉原知子がJTに植え付けたバレー。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/01/31 07:00
JTマーヴェラスが令和初のVリーグ女王の座に。エースのドルーズがMVPに輝いた。
なぜ優勝を引き寄せるのか?
吉原は現役時代、日立ベルフィーユ、ダイエーオレンジアタッカーズ、東洋紡オーキス、パイオニアレッドウィングスと、日本で所属した4チーム全てでリーグ優勝を経験し、「優勝請負人」と呼ばれたが、初めて監督を務めたJTでも、チームを優勝に導いた。
吉原知子はなぜ優勝を引き寄せられるのか。選手にそんな質問をすると、目黒優佳は「妥協しないからじゃないでしょうか」と答えてくれた。
監督に就任してから5シーズン、目指すバレーと、選手に求めるものは決してブレなかった。
掲げたのは「全員で拾って、全員で攻撃するバレー」。
就任1年目から、スパイカー4人が同時に攻撃を仕掛ける男子のブラジル代表の映像を選手たちに繰り返し見せながら意識づけし、妥協することなく理想を求め続けた。そのためにまず「ハードワーク」を課した。サーブレシーブをした後すばやく助走に入る、ブロックに跳んでもすぐに下がって攻撃に入る、といった基本的だが疎かになりがちなことを口酸っぱく言い続けた。
芥川は、「トモさん(吉原)が来てからの練習はやばかった。足のマメが、1日でできて1日でつぶれました。まあすごい練習で、『これはもう本気にならざるを得ない』という練習でしたね」と回想する。
エース、ミハイロヴィッチとのズレ。
2017年に、JTはセルビア代表のブランキツァ・ミハイロヴィッチを獲得し、それから2シーズン、ミハイロヴィッチは絶対的なエースとして得点を量産し、チームは優勝争いに絡んだ。
ただ、吉原は理想とのズレを感じていた。
「ミハイロヴィッチは素晴らしい選手です。ただ、チームにどれぐらいマッチするかというところで、お互いが生きなきゃ、チームってやっぱりなかなかうまくいかない。全然マッチしていなかったというわけではないけれど、うちの選手たちのテンポと、彼女のテンポにかなりの差がありました」
ミハイロヴィッチはゆっくりとした高いトスをパワフルに打ち込むスタイルで、4人が同時に攻撃を仕掛けるという指揮官の理想にフィットさせるのが難しかった。