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ジーターの殿堂入りに投じた1票と、
19年前に聞いた「涙の電話」。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKatsushi Nagao
posted2020/01/29 11:00
メジャーの殿堂の投票用紙。候補者の中から10人にチェックをつける形式だ。
2001年にはヤンキースの顔だった。
その約1週間後、世界貿易センタービルやペンタゴンに旅客機が次々と突っ込んだ。
同時多発テロの休止期間を経て再開されたメジャーリーグの試合後、ジーターがインタビューに答えている姿は、フェンウェイパークでのそれとは少し違って、とても深刻な様子だった。
「今もまだ、人々はひどいショックを受けている。だからこそ、たとえ一瞬でも現実に起こっていることを忘れて、野球を楽しんで欲しいと思うんだ」
当時からすでに彼は「ヤンキースの顔」であり、とくに試合に負けたり、優勝を逃したりした時にメディアやファンから「Accountability=説明責任」を求められていた。
彼がヤンキースのキャプテンとなったのは、その2年後の2003年だ。
まっさきに投票のチェックを入れた。
正直に言うと、件のインタビュー(後にも先にも、単独インタビューはあの1回だけだ)をした当時、私はジーターが通算3465安打も打つなんて思っていなかったし、40歳までプレーすることすら想像できなかった。
もしも、当時から分かっていたことがあったとしたら、それは彼がピンストライプのユニフォームを着ている限り、それからもずっと「チームを代弁すること」だったかも知れない。
デレク・ジーターはそれからもずっと、デレク・ジーターであり続け、ヤンキースにおける説明責任を果たしながら、殿堂入りに見合う立派な成績を残した。
あれから19年、殿堂投票をするにあたって最初に印を入れたのが「Derek Jeter」の欄だったのは、言うまでもないことだろう。